一日一曲(1810)カトゥアール、ゲオルギー:ピアノ五重奏曲ト短調
没後100年(1926年5月21日没)を迎えらえたロシアの作曲家、ゲオルギー・カトゥアールさん特集の四日目です。
第4日:教育者としての重責 —— モスクワ音楽院での日々
ロシア音楽理論の礎を築き、次世代の才能を育んだ、教育者・理論家としての円熟期
1916年、カトゥアールはモスクワ音楽院の作曲科教授に任命されました。この抜擢は、彼の創作活動だけでなく、その優れた理論家としての功績が公式に認められたことを意味します。以後、1926年に亡くなるまでその職を務め、ロシア音楽教育の近代化に大きく貢献しました。カバレスキーなど、後のソ連音楽界を背負って立つ多くの才能が彼の元から巣立っています。
彼は、自身の創作と並行して音楽理論の体系化に心血を注ぎました。彼が著した『和声学教程』や『音楽形式論』は、数学的な厳密さと実践的な音楽性を兼ね備えた画期的な内容で、現代に至るまでロシア音楽教育の基盤となっています。ロシア革命という激動の時代にあっても、彼は常に音楽の真理を問い続けました。この時期の作品には、初期の情熱を保ちつつも、一切の無駄を排した、より純化された境地が見られます。
【本日のご紹介曲:ピアノ五重奏曲ト短調 Op.28(1914年)】
カトゥアールの創作活動が最大の充実を見せた時期の作品です。室内楽の編成でありながら、オーケストラのような壮大な響きを湛えています。
【聴きどころ】
1)万華鏡のような和声の変遷
流麗な転調が、5つの楽器を通じて立体的かつダイナミックに展開されます。一瞬ごとに色彩が変わるような、圧倒的な音響体験をもたらします。
2)完璧に制御されたポリフォニー
5つのパートが独立した動きを見せながらも、全体として巨大な構造物を形作る様子は、理論家カトゥアールの面目躍如たる「音の建築」です。
3)劇的なクライマックス
楽曲の後半に向かって高まる熱量は凄まじく、理知的な制御と、スクリャービン的な恍惚感が見事な調和を見せます。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
カトゥアール、ゲオルギー:ピアノ五重奏曲ト短調
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