一日一曲(1751)グランヴァル、ニコラ・ラコ・ド:『6つの深刻で滑稽なカンタータ』より 第2番「何もない(Rien du tout)」
本日は、生誕350年(1676年3月4日生)を迎えらえたフランスの作曲家、ニコラ・ラコ・ド・グランヴァルさんの曲をご紹介します。
【ニコラ・ラコ・ド・グランヴァル:フランス・バロックの才気あふれる筆致で喜劇と音楽を融合させた多才な芸術家】
ニコラ・ラコ・ド・グランヴァル(Nicolas Racot de Grandval)は、1676年3月4日にフランスのパリで生を受けました。彼は音楽家としてのみならず、劇作家、詩人としてもその名を馳せた、当時としても稀有な多才さを誇る人物でした。
若くして音楽の才能を認められた彼は、パリのサン=ル・サン=ジル教会などのオルガニストとしてキャリアをスタートさせます。しかし、彼の真価が発揮されたのは教会の外、当時フランスで空前のブームを巻き起こしていた「カンタータ」の世界でした。彼は劇音楽の要素を取り入れたドラマチックでユーモア溢れる作品を次々と発表し、一躍時代の寵児となります。また、「コメディ・フランセーズ」の音楽監督としても長きにわたり活躍し、劇中音楽の作曲や自ら台本を執筆する喜劇作家としての活動を通じて、パリの演劇文化に多大な影響を与えました。
美食家で機知に富んだグランヴァルは、その自由奔放なライフスタイルでも知られていました。晩年まで創作意欲は衰えず、フランス音楽界に独自の足跡を残した彼は、1753年11月16日に、生まれ育った愛するパリの地で77歳の生涯を閉じました。
【本日のご紹介曲:『6つの深刻で滑稽なカンタータ』より 第2番「何もない(Rien du tout)」】
この作品は、1729年に出版された全6曲からなるカンタータ集の一曲です。タイトル通り「深刻」なスタイルを装いつつ、内容は徹底して「滑稽」という、グランヴァルらしいブラックユーモアが効いた傑作です。
第2番「何もない」は、音楽に飽き飽きした饒舌な歌手が、これまでの自身のキャリアを回想しながら、当時のドラマチックな音楽の「お決まりのパターン」を皮肉たっぷりに笑い飛ばすという、極めて風刺的な物語になっています。
【聴きどころ】
1)劇的なパロディと引用の妙
劇中のアリアには、当時有名だったクレランボーやカンプラといった人気作曲家たちの旋律がパロディとして巧みに引用されています。それらを皮肉な文脈で歌い上げる歌手の「毒舌」ぶりが最大の魅力です。
2)「何もない」という名の決意表明
曲の最後は、グランヴァル自身の本音が透けて見えるような独創的なアリアで締めくくられます。歌手は「もう何も歌いたくない(Rien du tout)」と宣言し、聴き手に対して音楽の虚飾を突き放すような、意外性に満ちたエンディングを迎えます。
3)フランス風エスプリの極致
ただの喜劇に留まらない、フランス・バロック特有の気品と、グランヴァル特有のシニカルなユーモアが同居しています。言葉の響きを大切にした語るような旋律(レシタティーフ)と、鮮やかなアリアのコントラストが、聴く者を最後まで飽きさせません。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
グランヴァル、ニコラ・ラコ・ド:『6つの深刻で滑稽なカンタータ』より 第2番「何もない(Rien du tout)」
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