一日一曲(1871)ヒューセンスタム、ジョージ:錬金術
本日は、生誕100年(1926年7月24日生)を迎えらえたアメリカの作曲家、ジョージ・ヒューセンスタムさんの曲をご紹介します。
【ジョージ・ヒューセンスタム:ロサンゼルスで育ち、高度な楽譜表記法の権威としても全米にその名を轟かせた高名な音楽理論家】
ジョージ・ヒューセンスタム(George Heussenstamm)は1926年7月24日、アメリカのカリフォルニア州ロサンゼルスに生まれました。彼は南カリフォルニア地域で音楽教育のすべてを受け、作曲家および音楽理論家としての礎を築きました。これまでに数々の国内および国際的な作曲コンクールで優勝を飾っているほか、ナショナル・エンドアメント・フォー・ジ・アーツ(NEA)から2度の助成金賞を授与されるなど、その優れた手腕は高く評価されています。また、全米作曲家協会(NACUSA)の副会長や、米国作曲家作詞家出版者協会(ASCAP)の会員を務めるなど、現代音楽界の発展にも大きく貢献しました。
1976年から2000年まではカリフォルニア州立大学システムで教鞭を執り、後進の育成に尽力しました。教育者としての彼の功績の中でも特に名高いのが、1987年にW.W.ノートン社から出版された著書『The Norton Manual of Music Notation(ノートン楽譜表記法マニュアル)』です。この本は現在も広く書き継がれ、使用されており、彼をアメリカにおける伝統的な楽譜表記法の第一人者としての地位を不動のものにしました。100曲を超える作品群の中にはダブルリード(オーボエやファゴットなど)のための作品が複数含まれており、現代の管楽器奏者たちにとって重要なレパートリーとなっています。大学での職を退いた後もカリフォルニアの地で暮らし、2024年4月8日、モントローズにて97歳でその天寿を全うしました。
【本日のご紹介曲:錬金術】
錬金術作品60は、1976年に作曲されたソロ・オーボエのための作品です。翌1977年には、国際ダブルリード協会(IDRS)が主催するソロ・オーボエ作曲コンクールで見事第1位を獲得しました。この曲は、本職が化学者であったオーボエ奏者ルドルフ・ドゥサラー(Rudolph Duthaler)のために書かれており、「錬金術」というタイトルや曲中に散りばめられた音楽的イメージは、彼の職業から強い影響を受けています。
本作はルチアーノ・ベリオの『セクエンツァ VII』(1969年作曲)や、ブルーノ・バルトロッツィの著書『木管楽器の新音響』からインスピレーションを得ており、重音奏法(一本の管楽器で同時に複数の音を出す技法)をはじめとする多彩な「拡張奏法」が要求されます。最大の特徴は、ソロ曲でありながら「録音された自分自身の演奏」と生演奏による二重奏(デュエット)を展開する点にあり、楽譜も終始2段のデュエット形式で書かれている革新的な作品です。
【聴きどころ】
1)伝統を超えた多彩な「拡張奏法」による音響空間
息づかい、アンブシュア(口の当て方)、アーティキュレーション、そして特殊な指使いを駆使した現代的な特殊奏法が次々と登場します。オーボエという楽器から奏でられるとは信じられないような、重音(マルチフォニックス)などの驚くべき音のパレットを体感できます。
2)生演奏と事前録音による「自己とのデュエット」
演奏者はあらかじめ前半のパート(ラインA)を録音しておき、本番ではその録音を再生しながら、もう一つのパート(ラインB)をライブで重ねて演奏します。一人の奏者が過去の自分と対話し、精緻な二重奏を織り上げていく構成の妙は圧巻です。
3)ステージ上でその場で生み出される即興性と一期一会のドラマ
曲の前半部分では、演奏者が楽譜の指示に従ってラインAとラインBの間を自発的に行き来できるようになっています。そのため、演奏される音の順序はステージごとに新しく変化し、演奏会ごとに全く異なる音楽のドラマが生まれるスリリングな展開が魅力です。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
ヒューセンスタム、ジョージ:錬金術
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