一日一曲(1867)ブムケ、グスタフ:ノットゥルノ
本日は、生誕150年(1876年7月18日生)を迎えらえたドイツの作曲家、グスタフ・ブムケさんの曲をご紹介します。
【グスタフ・ブムケ:20世紀初頭のドイツにおいてサクソフォンの芸術的可能性をいち早く見出し、クラシック音楽界における同楽器の普及と発展に生涯を捧げた先駆者】
グスタフ・ブムケ(Gustav Bumcke)は1876年7月18日、ドイツ帝国の首都ベルリンに生まれました。音楽への情熱を注いだ彼は、マックス・ブルッフやエンゲルベルト・フンパーディンクといった当時の大作曲家たちに師事し、伝統的な作曲技法を深く学びました。
彼の音楽人生において最大の転機となったのは、1902年のフランス・パリへの旅行でした。当時、ベルギー発祥の比較的新しい楽器であったサクソフォンは、フランスでは市民権を得つつありましたが、ドイツではまだオーケストラやコンサートで日常的に使われる楽器ではありませんでした。パリでサクソフォンの魅力に強く惹かれたブムケは、なんと一式すべての種類のサクソフォンを自ら購入し、ベルリンへと持ち帰ったのです。
ベルリンに戻った彼は、ドイツ初となるサクソフォン・オーケストラや様々なアンサンブルを次々と結成し、この楽器の普及活動に乗り出しました。しかし、当時のドイツにはサクソフォンのためのクラシック作品がほとんど存在しませんでした。そこでブムケは、自ら40曲を超えるあらゆるジャンルのサクソフォン楽曲を作曲し、さらに奏者の育成のために全5巻に及ぶ「サクソフォン教則本(エチュード)」を執筆するという精力的な活動を行いました。
教育者としてもベルリンのシュテルン音楽院などで教鞭を執り、ドイツにおけるサクソフォン音楽の礎を築き上げました。晩年まで音楽への情熱を絶やさず、東西分裂後の1963年4月7日(あるいは7月4日)、ベルリン近郊のクラインマハノーにて86歳でその尊い生涯を閉じました。彼の蒔いた種は、現在のドイツにおけるクラシック・サクソフォン奏者たちへと脈々と受け継がれています。
【本日のご紹介曲:ノットゥルノ(夜想曲)Es-dur Op. 45】
ブムケがアルト・サクソフォンとハープのために書き下ろした、ロマン派の薫り高い珠玉の小品です。この作品はブムケの生前には出版されず、生後長らく経った1992年になってようやく初めて楽譜が出版されました。
サクソフォンとハープという組み合わせは、一見すると音量のバランスなどが難しく珍しい編成に思われますが、ブムケは両者の音色の美しさを最大限に引き出しています。一見すると親しみやすい美しい小品でありながら、実はサクソフォン特有の正確な音程(イントネーション)を保つことや、ハープと緻密にテンポを合わせてアンサンブルを行う能力を高めるための「高度な教育的意図(エチュード)」が巧みに内包された名曲です。
【聴きどころ】
1)歌劇場を思わせるアリアのような美しい旋律
アルト・サクソフォンが奏でる、まるでオペラ歌手が朗々と歌い上げるアリア(歌曲)のような、優美で抒情的なメロディが作品全体を包み込みます。サクソフォンが持つ「人の声に最も近い」と言われる温かみのある音色を存分に味わうことができます。
2)ハープが描く優美な流動感
サクソフォンの歌を支えるように、ハープが絶え間なく流れるような16分音符のアルペジオ(分散和音)を奏でます。このきらめくようなハープの伴奏が、まさに静寂な「夜の空気感」やロマンチックな世界観を美しく演出します。
3)二つの楽器が織りなす極上の親密感
大きな音が出せるサクソフォンがハープの繊細な響きをかき消さないよう、密接に寄り添いながら会話をするように音楽が進みます。フレーズの長さが絶妙にコントロールされており、二人の奏者が呼吸を合わせて音を紡ぎ出すアンサンブルの緊張感と調和が最大の魅力です。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
ブムケ、グスタフ:ノットゥルノ
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