一日一曲(1924)ワルター、ブルーノ:ヴァイオリンソナタ イ長調
本日は、生誕150年(1876年9月15日生)を迎えられたドイツの指揮者兼作曲家、ブルーノ・ワルターさんの曲をご紹介します。
【ブルーノ・ワルター:ブルーノ・ワルター:20世紀を代表する巨匠指揮者であり、親友マーラーの精神を受け継ぐ濃密な後期浪漫派の響き】
ブルーノ・ワルター(本名ブルーノ・シュレジンガー)は、1876年9月15日、ドイツ帝国の首都ベルリンの裕福なユダヤ系家庭に生まれました。幼少期からピアノの才能を発揮した彼はシュテルン音楽院で学び、13歳で名門ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団とピアノ協奏曲を共演するほどの大才ぶりを示しました。しかし、名指揮者ハンス・フォン・ビューローの演奏に深い衝撃を受けたことで指揮者を志し、1894年にケルン市立歌劇場で指揮者デビューを果たします。1896年、ハンブルク歌劇場で運命的な出会いが訪れます。当時音楽監督を務めていたグスタフ・マーラーに才能を見出されたワルターは、彼を生涯の師・親友として深く敬愛するようになりました。1901年にはマーラーに招かれてウィーン宮廷歌劇場の副指揮者に就任し、この最初のウィーン時代(1901〜1912年)には「指揮者兼作曲家」として自身の創作活動にも情熱を注ぎました。
しかし、ナチス政権の台頭に伴い、ユダヤ系であった彼の人生は激動に見舞われます。1933年にドイツを追われてウィーンへ逃れ、1938年のオーストリア併合時にはスイスを経てフランスへ逃亡、1939年には大戦の火の粉を逃れてアメリカ合衆国へと亡命しました。亡命や第二次世界大戦、そして最愛の娘グレーテルを殺害されるという深い悲劇を乗り越えながらも、彼はニューヨーク・フィルやメトロポリタン歌劇場で不屈の音楽活動を続けました。戦後は再びヨーロッパの楽壇にも復帰し、晩年には彼のために特別結成されたコロンビア交響楽団と数々の歴史的名盤(ステレオ録音)を残しました。晩年はカリフォルニア州ビバリーヒルズの自宅で穏やかに過ごし、1962年2月17日、85歳でその波乱に満ちた生涯を閉じました。
【本日のご紹介曲:ヴァイオリンソナタ イ長調】
今回ご紹介する「ヴァイオリンソナタ イ長調」は、ワルターが1908年に作曲した室内楽作品です。彼の作品群の中で生前に唯一出版された室内楽作品であり、同時に彼が遺した最後の室内楽曲でもあります。
当時、名指揮者としての多忙なキャリアを歩み始めていた20代後半から30代前半のワルターは、シューマンやブラームス、そして親友マーラーからの強い影響を受けながら濃厚なロマン主義的表現を追求していました。
本作品は、長年の芸術的パートナーであり、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の伝説的なコンサートマスターであったアルノルド・ロゼ(Arnold Rosé)のために書かれ、彼に捧げられました。1909年3月9日、ロゼのヴァイオリンとワルター自身のピアノ演奏によって初演されています。偉大な名手であったロゼのために書かれたこともあり、ヴァイオリン・ピアノの双方に極めて高い演奏技術と深い情感が求められる重厚な佳曲です。
【聴きどころ】
1)第1楽章:ドラマティックな「2つのテーマ」の激突
冒頭、イ長調で奏でられる力強く情熱的な第1主題で華々しく幕を開けます。続いて登場する嬰ヘ短調の第2主題は、一見静けさを湛えていますが、次第に第1主題の持つ激しい感情に引き込まれ、展開部では2つの主題がまるでドラマのように火花を散らして対峙します。
2)第2楽章:万華鏡のように目まぐるしく変化する曲相
「真面目に」「神秘的に」「痛切に」「極めて甘美に」「激しく」「消え入るように」といった、めまぐるしく変わる表情指示が楽譜に刻まれています。世紀末から20世紀初頭にかけてのウィーンらしい、移ろいやすく濃密な感情の振れ幅を堪能できる楽章です。
3)第3楽章:ロンド形式で巧みに織りなされる技巧と反転の妙
イ短調で書かれた最終楽章は、快活で構築美にあふれたロンド形式(メインテーマが何度も繰り返される形式)をとっています。メインテーマ(リフレイン)がヴァイオリンとピアノで交互に受け継がれるだけでなく、時には旋律が上下逆さまになる「反転形」として登場するなど、ワルターの高度な作曲テクニックが光ります。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
ワルター、ブルーノ:ヴァイオリンソナタ イ長調
ワルター、ブルーノ:ヴァイオリンソナタ イ長調(amazon music)
|
|
