一日一曲(1970)ルイス・デ・リバヤス、ルーカス

 本日は、生誕400年(1626年生)を迎えられたスペインの作曲家、ルーカス・ルイス・デ・リバヤスさんをご紹介します。

【ルーカス・ルイス・デ・リバヤス:ギターとハープのための多彩な舞曲を収集・編纂し、スペイン黄金世紀の躍動するリズムと豊かな音楽文化を後世に伝えた、17世紀スペイン・バロックの音楽家】
 ルーカス・ルイス・デ・リバヤス(Lucas Ruiz de Ribayaz)は、1626年、スペイン北部ブルゴス近郊のサンタ・マリア・デ・リバレドンダに生まれました。幼少期について詳しい記録は残されていませんが、のちに聖職者となり、ギターやハープの演奏、音楽理論にも深い知識を身につけました。
 リバヤスは、スペイン北西部のビリャフランカ・デル・ビエルソにある参事会教会と関わりを持ち、聖職者として活動しました。また、有力貴族であったレモス伯爵家に仕え、その庇護のもとで音楽の研鑽を積みました。本人の著作によれば、本格的に音楽を学んだのは聖職者となってからだったようです。
 1667年には、ペルー副王に任命された第10代レモス伯爵ペドロ・アントニオ・フェルナンデス・デ・カストロの一行に加わり、南米のペルーへ渡りました。この旅には、のちに南米の音楽史で重要な役割を果たす作曲家トマス・デ・トレホン・イ・ベラスコも同行していました。リバヤスがペルーでどのような音楽活動を行ったのかは詳しく分かっていませんが、当時のスペインと新大陸の文化交流に接する機会となりました。
 帰国後の1677年、マドリードで音楽理論書兼曲集『ルス・イ・ノルテ・ムシカル(Luz y norte musical)』を出版しました。日本語では「音楽の光と道しるべ」といった意味になるこの書物は、スペイン式ギターとハープの演奏法を解説するとともに、当時親しまれていた数多くの舞曲を収録したものです。
 曲集では、弦をかき鳴らして和音を奏でる「ラスゲアード」と、弦を一本ずつ弾く「プンテアード」というギターの奏法に加え、装飾音や即興的な変奏の方法なども扱われています。また、フォリア、シャコンヌ、ハカラ、カナリオスなど、スペインを中心に広く親しまれた舞曲が数多く収められています。
 この曲集には、リバヤス自身が手がけたと考えられる作品のほか、ガスパル・サンス、アンドレス・ロレンテ、フアン・デル・バードなど、他の音楽家の作品も含まれています。特にギター曲の多くはサンスの作品に由来すると考えられており、純粋な自作曲集というより、17世紀スペインの器楽音楽と演奏習慣を伝える貴重な資料として高く評価されています。
 リバヤスの晩年については詳しい記録がなく、没年も明らかになっていません。一般には1677年以降に亡くなったとされています。
 今日、リバヤスの名は主としてこの一冊の曲集によって伝えられています。そこに記録された生き生きとした舞曲の数々は、宮廷の優雅な舞踏から民衆の活気あふれる踊りまで、スペイン・バロック音楽の多彩な魅力を現代に伝えています。

【『ルス・イ・ノルテ・ムシカル』収録の舞曲5選】
1)エスパニョレータス(Españoletas)
 16世紀からスペインで親しまれていた舞曲に基づく作品です。穏やかで優美な旋律と、ゆったりとした舞曲のリズムが特徴で、ギターやハープの柔らかな響きがよく似合います。旋律を装飾しながら繰り返すことで、簡潔な音楽の中にも豊かな表情が生まれます。スペイン古典舞曲の気品を味わえる一曲です。

2)ハカラス(Xácaras por primer tono)
 ハカラは、17世紀スペインの都市文化や演劇と結びついて発展した、活気のある舞曲です。「第1旋法によるハカラ」と題されたこの作品では、歯切れのよいリズムと変奏によって音楽が展開します。力強い拍子と軽快な動きからは、当時の街角や劇場のにぎわいを感じ取ることができます。

3)フォリアス(Folías)
 フォリアは、一定の和声進行を土台に変奏を重ねていく舞曲・変奏形式で、バロック時代のヨーロッパ各地で広く親しまれました。この曲集に収められたフォリアスも、繰り返される和声の上で旋律やリズムが変化していくところに魅力があります。後世の作曲家たちにも受け継がれた、バロック音楽を代表する変奏の世界を楽しめます。

4)シャコナスとマリオナス(Chaconas y Marionas)
 シャコンヌとマリオナスという、繰り返される和声進行を特徴とする二つの舞曲を組み合わせた演奏です。明快なリズムと次々に変化する音楽的な装飾が、軽快で華やかな雰囲気を生み出します。単純な音型を繰り返しながら多彩な変化を加えていく、17世紀スペインの即興的な演奏文化を感じさせる音楽です。

5)カナリオス(Canarios)
 カナリア諸島に由来するとされる、活発なリズムが特徴の舞曲です。跳躍するような動きと歯切れのよい拍子が印象的で、ギターの華やかな響きが生かされます。踊り手の軽快な足さばきを思わせる躍動感があり、スペイン・バロックの舞曲が持つ明るさと生命力を存分に味わえる作品です。

※ NMLシステム障害はようやく復旧したようです。本ブログでは11月2日より、以前のようにNMLにある曲をご紹介していきます。

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