一日一曲(1966)ギボンズ、オーランド

 昨日はクリストファー・ギボンズさんをご紹介しました。本日は、その父で、昨年没後400年(1625年6月5日没)を迎えられたイギリスの作曲家、オーランド・ギボンズさんをご紹介します。

【オーランド・ギボンズ:透明感あふれる声楽と精緻な対位法を自在に操り、宗教音楽、マドリガル、鍵盤音楽、ヴィオール合奏のすべてに傑作を残した、英国ルネサンス音楽最後の巨匠】
 オーランド・ギボンズ(Orlando Gibbons)は、1583年、イングランドのオックスフォードに生まれ、12月25日に洗礼を受けました。父ウィリアムは職業音楽家で、兄エドワードとエリスも作曲家として活動するなど、音楽に恵まれた家庭で育ちました。
 1596年にはケンブリッジ大学キングズ・カレッジの聖歌隊に入り、聖歌隊の指導者を務めていた兄エドワードのもとで音楽を学びました。幼い頃からその才能を発揮し、1598年には同大学に進学しました。
 1604年頃には王室礼拝堂のオルガニストとなり、国王ジェームズ1世の宮廷で活躍しました。その卓越した鍵盤演奏技術は高く評価され、当代随一のオルガニストとして名声を確立しました。1606年にはケンブリッジ大学で音楽学士号を取得し、同年、エリザベス・パッテンと結婚しました。夫妻の間には、後に作曲家となるクリストファーを含む7人の子どもが生まれています。
 作曲家としても幅広い分野で才能を発揮し、1612年には『5声のマドリガルとモテット集』を出版しました。その中に収められた『銀色の白鳥』は、死を前にした白鳥の最後の歌を描いた作品で、英国マドリガルを代表する名曲として今日まで親しまれています。
 また、1612~13年頃に出版された英国初の印刷鍵盤楽譜集『パーセニア』には、ウィリアム・バード、ジョン・ブルとともに作品が収録されました。これは、オーランドが英国鍵盤音楽の次世代を担う存在として認められていたことを示しています。
 宗教音楽の分野では、英国国教会の礼拝で歌われるアンセムや聖歌を数多く作曲しました。特に、独唱と合唱を交互に用いるヴァース・アンセムの表現を発展させ、聖書の言葉を明瞭に伝える旋律と豊かな対位法を融合させました。
 器楽作品にも優れ、ヴァージナルやオルガンのための鍵盤曲、ヴィオール合奏のためのファンタジアなどを残しました。複数の旋律が精緻に絡み合うその音楽は、ルネサンス期の多声音楽の伝統を受け継ぎながら、バロック音楽へとつながる新しい表現を示しています。
 1622年にはオックスフォード大学で音楽博士号の取得を申請したと伝えられていますが、実際に授与されたかどうかについては議論が残されています。翌1623年にはウェストミンスター寺院のオルガニストに就任しました。しかし、1625年6月5日、国王の宮廷に関わる任務で訪れていたカンタベリーで突然亡くなりました。41歳の若さでした。その作品は、英国ルネサンス音楽の集大成として高く評価されるとともに、息子クリストファーや後世の英国作曲家たちへと受け継がれていきました。

【代表作品5選】
1)『銀色の白鳥』(The Silver Swan、1612年)
 5声のマドリガル。生きている間は歌わなかった白鳥が、死を前にして初めて美しい歌を歌うという寓意的な詩を題材にしています。静かで透明感のある響きの中に、人生のはかなさや深い哀愁が込められた、英国マドリガルの傑作です。

2)『これぞヨハネの証し』(This is the Record of John)
 独唱と5声の合唱によるヴァース・アンセム。洗礼者ヨハネの証言を題材とし、独唱者の語りかけに合唱が応答する形式で構成されています。言葉の意味を生かした自然な旋律と、独唱と合唱の巧みな対比が魅力です。

3)『もろびとよ、手を打ち鳴らせ』(O clap your hands together)
 8声の壮麗なアンセム。旧約聖書の詩編第47編に基づき、神への賛美と喜びを力強く歌い上げます。2つの合唱群が呼応する華やかな構成と、次々に重なり合う声部による壮大な響きが特徴で、オーランドの対位法の技術を存分に味わえる作品です。

4)『ソールズベリー卿のパヴァーヌとガリアード』(Lord Salisbury’s Pavan and Galliard)
 鍵盤楽器のための舞曲。荘重で落ち着いたパヴァーヌと、躍動感のあるガリアードが対をなしています。繊細な旋律と豊かな和声が生み出す深い情感が印象的で、英国ヴァージナル音楽の洗練された魅力を伝える代表作です。

5)『6声のファンタジア 第1番』(Fantasia No. 1 for Six Viols)
  6本のヴィオールのための器楽作品。異なる旋律が次々に現れ、互いに模倣しながら複雑に絡み合う対位法が特徴です。高音、中音、低音の各2声部が独立した動きを保ちながら美しい調和を生み出し、オーランドの高度な作曲技術と豊かな音楽的想像力を堪能できます。

(NMLシステム障害のため、代表作品を文章のみでご紹介します)

\ 最新情報をチェック /

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です