一日一曲(1926)ギャブロ、ケネス:アンティフォニー X
本日は、生誕100年(1926年7月5日生)を迎えられたアメリカの作曲家、ケネス・ギャブロさんの曲をご紹介します。
【ケネス・ギャブロ:電子音楽と「言語作曲法(Compositional Linguistics)」を開拓した現代音楽界の鬼才】
ケネス・ギャブロは、1926年7月5日にアメリカ合衆国ニュージャージー州サマービルで生まれました。イーストマン音楽学校で学び、イタリアに留学してゴッフレード・ペトラッシのもとで12音技法などの研鑽を積んだ後、イリノイ大学やカリフォルニア大学サンディエゴ州立大学(UCSD)、アイオワ大学などで長年にわたり教鞭を執りました。
彼は単なる電子音楽の先駆者にとどまらず、声・言語・音声の物理的構成要素(音素など)を緻密に解析・再構成する「Compositional Linguistics(言語作曲法)」という独自の領域を提唱・確立したことで広く知られています。また、ニュー・ミュージック・合唱アンサンブルを主宰し、先鋭的な作品の演奏と研究に捧げた生涯でした。
晩年まで音と人間のコミュニケーションの極限を探求し続けたギャブロは、1993年1月26日、アイオワ州アイオワシティにて66歳でその生涯を閉じました。
【本日のご紹介曲:アンティフォニー X (ウィンテッド)(Antiphony X (Winded)】
本曲は1987年から1991年にかけて作曲されました。パイプオルガンとテープ(あるいは8チャンネルの録音音源)、そして補助奏者を伴う大作です。タイトルの「Antiphony」は交互唱(交唱)を意味し、ギャブロが生涯にわたって展開した重要シリーズ(1957年のⅠから始まる)の最高峰・集大成に位置づけられます。
サブタイトルの「Winded」には、「息を吹き込まれた」「息を切らした」「風を受けた」といった多層的な意味が込められており、パイプオルガンという「風(空気圧)で鳴る楽器」の物理的メカニズムと、電子音・録音テープの響きとが重厚に交錯する音空間が構築されています。
【聴きどころ】
1)風(空気)とパイプオルガンの物理的対峙
パイプオルガンの送風メカニズムや空気の動きそのものを音響素材として意識させ、管楽器や人間の「息」と共鳴するような息の長い持続音と音塊(トーン・クラスタ)が織りなす圧倒的な音の密度。
2)生演奏(オルガン)と8チャンネル音源の「交唱(アンティフォニー)」
ステージ上のパイプオルガンの生演奏と、周囲から押し寄せる電子音・変調音源(テープ)が互いに問いかけ、応えることで、演奏空間全体が巨大なひとつの「音響体」へと変貌する立体的な空間設計。
3)伝統的楽器と先進的エレクトロニクスの緊張感あふれる融合
数千年の歴史を持つパイプオルガンというクラシカルな構造物に対し、20世紀後半の高度な音響テクノロジーを対峙させることで生まれる、荘厳でありながらどこか過激で神秘的な音像体験。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
ギャブロ、ケネス:アンティフォニー X
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