一日一曲(1864)ウミリアーニ、ピエロ:海の黄昏

 本日は、生誕100年(1926年7月17日生)を迎えらえたイタリアの作曲家、ピエロ・ウミリアーニさんの曲をご紹介します。

【ピエロ・ウミリアーニ:キャッチーなラウンジ・ミュージックから映画音楽までを網羅し、イタリアン・シネ・ジャズの礎を築いた異才】
 ピエロ・ウミリアーニは1926年7月17日、イタリアのトスカーナ州フィレンツェに生まれました。幼少期に祖父のピアノに触れたことで音楽への道を歩み始め、地元のルイジ・ケルビーニ音楽院で伝統的なクラシックの作曲法を学びます。その一方で、当時のファシズム政権下では冷遇されていたアメリカのジャズに強い魅力を感じ、若くしてジャズ評論の執筆やバンド活動に身を投じました。

 大学で法学の学位を取得したものの、音楽への情熱は絶えず、1950年代半ばから映画音楽の世界へと本格的に進出します。1958年の映画『ど根性物語(I soliti ignoti)』では、イタリア映画史上初となるフル・ジャズのサウンドトラックを書き下ろし、その名を広く轟かせました。また、1968年のドキュメンタリー映画のために彼が書き下ろした軽快なスキャット曲『マナ・マナ(Mah Nà Mah Nà)』は、後にアメリカの教育番組『セサミストリート』で起用されて世界的な大ヒットを記録するなど、ジャンルや世代を超えて愛されるポップ・アイコンとしても足跡を遺しています。彼の作風は極めて柔軟で、ボサノヴァ、エレクトロニカ、サイケデリックなど、時代の先端を行くポップな要素を巧みに取り入れ、生涯で150作以上の映画音楽や膨大なライブラリー・ミュージック(放送用背景音楽)を遺しています。

 晩年はローマに設立した自身のスタジオ「サウンド・ワーク・ショップ」を拠点に活動し、脳卒中による一時的な活動休止を乗り越えながらも、ジャズへの回帰を果たしました。そして2001年2月14日、惜しまれつつローマの地で74年の生涯を閉じました。

【本日のご紹介曲:「海の黄昏」 (Crepuscolo Sul Mare)〜ハープ独奏版〜】
 この楽曲は、1969年に公開されたイタリアのクライム映画『ギャングの法則(La legge dei gangsters)』のサウンドトラックとして1969年に作曲されました。本来は映画の背景を彩る一編の小規模なスタジオ・アンサンブル(ギター、ヴォーカリーズ、ストリングス)による劇伴音楽でしたが、そのノスタルジックで圧倒的に美しい旋律から、ウミリアーニの代表作として時代を超えて愛され続けています。

 本日の演奏はハープ独奏曲として編曲されたバージョンです。本編曲では、原曲の持つお洒落な浮遊感はそのままに、ハープ特有の優美で繊細な響きによって、まるで水面に反射する夕光のような幻想的な世界観へと昇華されています。

【聴きどころ】
1)水面を揺らすようなアルペジオの陰影
 原曲のギターによる物悲しい爪弾きが、ハープの豊かなアルペジオ(分散和音)へと置き換わっています。幾重にも重なる弦の響きが、夕暮れの海原に広がる静かな波のきらめきを立体的に描き出します。

2)1本の楽器で紡ぐ「歌」と「伴奏」の対話
 原曲ではソプラノ歌手が切なく歌い上げた主旋律を、ハープがクリアで温かみのある高音域で見事に表現しています。左手が刻む深い低音の伴奏と、右手が奏でる伸びやかなメロディが、1本の楽器の中でまるで対話するように美しく溶け合います。

3)ハープならではの残響がもたらす「黄昏」の空気感
 音が消え入る瞬間の長い余韻(残響)はハープならではの魅力です。曲の終盤に向けて、一音一音の響きが空間にじわりと溶けていく様子は、まさに太陽が水平線の彼方へと沈み、ゆっくりと夜が訪れる「海の黄昏」そのものの情緒を感じさせます。

NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
ウミリアーニ、ピエロ:海の黄昏

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