一日一曲(1855)フォスター、スティーヴン・コリンズ:夢見る人(夢路より)

 生誕200年(1826年7月4日生)を迎えらえたアメリカの作曲家、スティーヴン・コリンズ・フォスターさん特集の五日目、最終日です。

【スティーヴン・コリンズ・フォスター:激動のアメリカを美しい旋律で満たし、人々の心に永遠の郷愁を植え付けた孤高のメロディメーカー】

【第5日】『夢見る人(夢路より)』 (Beautiful Dreamer) ~ 孤独な天才が人生の最期に遺した、美しき「白鳥の歌」 ~
 私生活の破綻と深刻な経済的困窮により、フォスターはアルコールに深く依存するようになっていきました。1860年、一発逆転のヒットを夢見て単身ニューヨークへと移り住みますが、南北戦争の勃発という時代の激変もあり、彼の書く甘美な歌曲は次第に時代遅れとみなされるようになります。安宿を転々とし、1曲数ドルの二束三文で書き殴った楽譜を売っては糊口をしのぐという、あまりにも惨めな極貧生活を送っていました。そして1864年1月10日、滞在していたニューヨークの安ホテル「ニュー・イングランド・ホテル」の洗面所で、高熱によるめまいから転倒し、割れた洗面台の破片で頭部と首を深く負傷します。ただちにベルビュー病院へ搬送されましたが、衰弱しきっていた彼は3日後の1月13日、37歳という若さで帰らぬ人となりました。彼の遺品は、わずか38セントの小銭と、「親愛なる友人と優しい心(Dear friends and gentle hearts)」と鉛筆で書き残された小さな紙切れ1枚だけでした。その死からおよそ2か月後、出版社から1曲の楽譜が刊行されます。それが、彼が死の直前に完成させていたとされる事実上の絶筆『夢見る人(夢路より)』です。

【本日のご紹介曲:『夢見る人(夢路より)』】
 1864年、フォスターの没後に出版された、彼の生涯の掉尾を飾る最高傑作です。日本では津川主一による「夢路より帰りて、星の光仰げや……」という格調高い訳詞で、学校の音楽教科書にも長く掲載されている名曲です。

【聴きどころ】
1)世俗の苦しみをすべて忘れさせる、天国的な美しさのメロディ
 現実世界の極貧と孤独の中で書かれたとは到底信じられないほど、この世のものとは思えないほど純粋で、穏やかな美しい旋律が流れます。
2)揺りかごのように優しく寄り添う9/8拍子のリズム
 ゆったりとした3拍子系のリズム(9/8拍子)が、まるで夢の世界を漂う小舟や、幼い頃に母親に揺られた揺りかごのような安心感を聴き手に与えます。
3)「生への祈り」が込められた気品ある幕切れ
 曲の後半、「すべての雲が消え去るまで、美しい夢を見ておくれ」と歌い上げる場面での気品に満ちた高まりは、フォスターという孤独な天才が遺した、人類への最高の贈り物と言えます。

NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
フォスター、スティーヴン・コリンズ:夢見る人(夢路より)

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