一日一曲(1846)カレーニョ、イノセンテ:小さな歌

 本日は、没後10年(2016年6月29日没)を迎えらえたベネズエラの作曲家、イノセンテ・カレーニョさんの曲をご紹介します。

【イノセンテ・カレーニョ:ベネズエラが世界に誇るクラシック音楽教育システム「エル・システマ」の若き音楽家たちからも深く敬愛され、郷土の美しい伝統のメロディを紡ぎ続けた巨匠】
 イノセンテ・カレーニョは1919年12月28日、ベネズエラのカリブ海に浮かぶマルガリータ島のポルラマルという街に生まれました。幼い頃に父親を亡くした彼は、祖母のマウリシアや、後に高名なフォークロア研究家となる兄のフランシスコから、島の豊かな伝統音楽や古い民話をたっぷりと聴かされて育ちます。この幼少期の原風景が、彼の音楽の揺るぎない土台となりました。9歳でギターを学び始めたカレーニョは、家族で首都カラカスへ移住した後に本格的な音楽教育を受け始めます。巨匠ビセンテ・エミリオ・ソホに師事し、伝統的なワルツやホローポ、メルエンゲといった大衆音楽のスタイルを血肉化しながら、クラシックの作曲技法を貪欲に吸収していきました。
1954年に発表した交響変奏曲『マルガリテーニャ』が大成功を収め、彼はベネズエラを代表する作曲家としての地位を確立します。カレーニョの音楽人生を語る上で印象的なのは、彼が90歳を過ぎてなお現役の音楽家として圧倒的な情熱を持ち続けたことです。2011年には、あの世界的指揮者グスタフ・ドゥダメルが率いるシモン・ボリバル・ユース・オーケストラの指揮台に当時91歳のカレーニョ自らが立ち、自身の新曲の初演を指揮して聴衆を沸かせました。
 1989年にはベネズエラ国家音楽賞を受賞するなど、生涯を通じて同国の音楽界を牽引し続けた彼は、2016年6月29日、愛する生まれ故郷のポルラマルにて96歳でその天寿を全うしました。

【本日のご紹介曲::『小さな歌』(Pequeña Canción)】
 『小さな歌(ペケーニャ・カンシオン)』は、カレーニョが1966年に作曲したピアノのための愛らしい小品です。どこか懐かしく、胸が締め付けられるような美しい抒情性に満ちています。タイトル通り、大掛かりな構成ではなく、心に寄り添うような素朴な「歌」が優しく紡がれていく名曲です。

【聴きどころ】
1)郷愁を誘う甘美なメロディ
 まるで遠い日の記憶をたどるかのような、切なくも温かい旋律が魅力です。一度聴くだけで耳に残るような、どこか日本の童謡にも通じるような親しみやすさを持っています。
2)内省的で繊細なピアノの響き
 激しいテクニックで圧倒するのではなく、音と音の間にある静寂や、鍵盤にそっと触れるような繊細なタッチが求められます。穏やかな波のように移り変わる和音の美しさに心が洗われます。
3)言葉のない「歌」としての表現力
 歌詞を持たないピアノ曲でありながら、まるで誰かが耳元でそっと囁き、歌いかけてくれているような雄弁な語り口を持っています。作曲者が大切にしたベネズエラの叙情の真髄を、ピアノの豊かな響きから感じ取ることができます。

NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
カレーニョ、イノセンテ:小さな歌

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