一日一曲(1887)ケンピス、ニコラウス・ア:聖フランシスコ・ザビエルを称えるシンフォニア
本日は、没後350年(1676年8月11日埋葬(または没))を迎えらえたフランドルの作曲家、ニコラウス・ア・ケンピスさんの曲をご紹介します。
【ニコラウス・ア・ケンピス:イタリア初期バロックの先進的な旋律美と器楽様式をフランドルの地に移植し、同時代の絵画世界とも共鳴する表現力豊かな器楽曲を残したオルガニスト】
ニコラウス・ア・ケンピス(Nicolaus a Kempis)は、1600年頃に生まれたとされていますが、正確な生誕地や幼少期の足跡については未だ謎に包まれています。彼の名前に時に「フィオレンティーノ(フィレンツェ人)」との呼び名が添えられたことから、かつてはイタリア出身説も取り沙汰されましたが、現在ではフランドル系音楽家の家系に属し、イタリア旅行や同時代音楽との交流を通じてその最新様式を凝縮・体得したという見解が有力視されています。彼が歴史の表舞台に確かに姿を現す最初の記録は、1626年頃、ブリュッセルの聖ミカエル&グデュラ大聖堂(当時の聖グデュラ教会)のオルガニストに任命された時です。彼は生涯の大半をこの地で過ごし、当時同じブリュッセルを拠点とし活動していた宮廷画家ピーテル・パウル・ルーベンスをはじめとする絢爛たるバロック芸術の空気を身近に吸いながら、宗教音楽と器楽作品の双方で大きな貢献を果たしました。とりわけアントワープの出版社ファレジウス等から1644年から1649年にかけて刊行した全4巻の集大成『シンフォニア集(Symphoniae)』は、フランドル地方にイタリア風トリオ・ソナタの精緻な対位法とヴァイオリンの技巧的な装飾技法をもたらした金字塔的作品群として高く評価されています。長年にわたり大聖堂の音楽的支柱として活動したケンピスは、息子ヨハネス・フロレンティウスら後進にもその才を継承させた後、1676年にブリュッセルにて没し、同年8月11日に同地に埋葬されました。
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【本日のご紹介曲:聖フランシスコ・ザビエルを称えるシンフォニア(Symphonia ad honorem Sancti Francisci Xavieri)】
本曲は、ケンピスが1649年に発表した『シンフォニア集 第3巻(Opus tertium)』の最後に収められた器楽作品です。曲題にあるフランシスコ・ザビエルは1622年に列聖されたナバラ出身の宣教師であり、当時としては比較的「新しい聖人」を無償の情熱によって崇める意図をもって書かれました。一風変わった聖人への祝礼曲ですが、ルーベンスが描いた『フランシスコ会の修道士の頭部』に見られるような熱切と謙虚の表情を音楽で捉えたかのように、深遠な宗教的情緒と祝典的な喜びが同居しています。形式としてはイタリア由来のトリオ・ソナタの構造をベースにしつつ、フランドル伝統の厳密で密度の高いポリフォニーが融合されており、重厚かつ色鮮やかな響きが特徴です。
【聴きどころ】
1)静寂から溢れ出る「Grave」の荘厳な祈り
楽曲冒頭は、荘重で密度の高いテンポ(Grave)によって始まります。聖人に対する深甚な敬意と崇高な信仰心を象徴するかのように、低音の上に重ねられる密やかな旋律線が重厚で温かみのある和声のグラデーションを描き出します。
2)ヴァイオリンとコルネットによる洗練された旋律の対話
ケンピスの作品の真骨頂である、イタリア由来の華麗な器楽技法と対位法的な掛け合いが見事です。高音楽器同士が互いにテーマを継承し、装飾的な変奏を加えながら絡み合う様は、絵画の緻密な色彩表現にも似た緻密な美しさを見せます。
3)聖人の栄光を称える鮮やかな「Allegro」のフィナーレ
祈りに満ちた静寂の場面から一転し、曲は歓喜に満ちあふれたテンポの速い部(Allegro)へと雪崩れ込みます。異国での伝道に生涯を捧げた聖ザビエルの栄光と賛美を鮮やかに描き出し、輝かしい開放感とともに曲を劇的に締めくくります。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
ケンピス、ニコラウス・ア:聖フランシスコ・ザビエルを称えるシンフォニア
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