一日一曲(1888)カー、エドウィン:ベートーヴェンの主題による変奏曲

 本日は、生誕100年(1926年8月10日生)を迎えらえたニュージーランドの作曲家、エドウィン・カーさんの曲をご紹介します。

【エドウィン・カー:ニュージーランドの伝統的抒情と欧州前衛の鋭敏な感性を融合させ、独自の音響世界を切り拓いた音楽の探求者】
 エドウィン・カー(本名:エドウィン・ジェームズ・ネアーン・カー)は、1926年8月10日にニュージーランドのオークランドで生まれました。オタゴ大学およびオークランド大学で音楽を学び、ニュージーランド音楽界の先駆者であるダグラス・リルバーンらの影響を受けながら作曲の礎を築きました。1948年に政府奨学金を得てイギリスへ留学し、ロンドンのギルドホール音楽学校でベンジャミン・フランケルに師事します。
 その後、彼の活動舞台はヨーロッパ全域へと広がります。イタリアではローマのサンタ・チェチーリア国立アカデミアでゴッフレード・ペトラッシに学び、イタリア新バレエ団の音楽監督を務めてバレエ音楽を手掛けるなど多方面で活躍しました。さらにドイツのミュンヘンへ渡り、名曲『カルミナ・ブラーナ』で知られるカール・オルフのもとでも薫陶を受けています。このような欧州各地での修業と滞在を通じて、カーは新古典主義的な精緻さと洗練された管弦楽法をその身に吸収していきました。
 オーストラリアやイギリスで作曲家・指導者として多忙な日々を送った後、1984年に母国ニュージーランドへ拠点を戻しました。1991年からは豊かな自然に囲まれたワイヘケ島に居を構え、最晩年まで意欲的な作曲活動を継続します。1999年には音楽界への長年の顕著な功績が認められ、ニュージーランド勲章(MNZM)を授与されました。
 多彩な交響曲や協奏曲、オペラ、室内楽など幅広いジャンルに作品を残したカーは、2003年3月27日、愛するワイヘケ島の自宅にて76歳でその生涯を閉じました。

【本日のご紹介曲:ベートーヴェンの主題による変奏曲】
 作曲年:1992年
 演奏時間:約7分
 編成:ピアノ独奏
1992年にニュージーランド芸術評議会の支援を受けて委嘱・作曲された、ピアノ独奏のための小品です。偉大な楽聖ベートーヴェンの印象的なモチーフを骨格としながら、6つの変奏(6 Variations)を通して巧みに形を変えていく様子が鮮やかに描かれています。古典的な親しみやすさと20世紀音楽の響きが調和した見事な展開を楽しむことができます。

【聴きどころ】
1)主題の鮮烈な変容
 冒頭で提示される原曲の親しみやすいフレーズが、変奏が進むにつれて予想外の音律やテンポへと万華鏡のように変化していくスリリングな仕掛けが魅力的です。
2)約7分間に凝縮されたピアニスティックな色彩感
 コンパクトな演奏時間の中に、繊細で静けさをたたえた変奏から、鍵盤上を縦横無尽に駆け巡るテクニカルな変奏まで、ピアノという楽器の魅力が濃密に詰まっています。
3)伝統とモダンが交錯するクライマックス
 古典的な変奏曲の厳密な構造を守りつつも、カー特有の洗練された和声美と情熱的な展開が組み合わさり、終盤に向けて力強く高まっていくドラマティックな構成美をご堪能ください。

NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
カー、エドウィン:ベートーヴェンの主題による変奏曲

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