一日一曲(1937)アセンホ、フロレンシオ:管弦楽のための協奏曲
本日は、生誕100年(1926年9月28日生)を迎えられたアルゼンチンの作曲家、フロレンシオ・アセンホさんの曲をご紹介します。
【フロレンシオ・アセンホ:独自の「マキシマリズム」を掲げ、音楽における実質的な密度と絶え間ない変化を追求した探究者】
フロレンシオ・アセンホは、1926年9月28日にアルゼンチンのブエノスアイレスで生まれました。若い頃から音楽に対する独自の深い洞察力を持っており、スペインの作曲家ハイメ・パヒッサに師事して音楽制作の様々な手法を学びました。
アセンホは音楽活動を始めた当初、西洋音楽の大部分を特徴づけている圧倒的な量の「反復」に対して強い疑問を感じていました。従来の交響曲や協奏曲では、最初に提示された力強い主題のあとに別の主題が続き、それらが単なる形式的な対比として扱われることが一般的でしたが、彼はこうした構造に満足しませんでした。彼は、ある主題から次の主題への移行が自然に行われ、それが無限に継続していくような、形式的な変奏ではなく「実質(サブスタンス)の発展」に基づく音楽の創造を志すようになります。
演劇の登場人物たちが同じセリフを繰り返すのではなく、対話をつなぎながら意味や雰囲気を深めていくように、彼は次々と新しい主題を生み出し、それらを美学的に接続していくアプローチを構築しました。この手法を彼は「マキシマリズム(maximalism)」と名付け、絶え間ない変化の中で高い内容密度を実現することを目指しました。このマキシマリズムの概念は、17世紀のオペラにおけるアリアの多様性や、現代の作曲家ヴィトルド・ルトスワフスキの発言などとも共鳴するものであり、彼は歴史的な視点も視野に入れながら独自の音楽哲学を突き詰めました。
その後、アメリカ合衆国のペンシルベニア州ピッツバーグを生活と活動の拠点にし、大学教授などとしても活躍しながら、学問と芸術の両面からアプローチを深めました。数学的な思考も背景に持ちながら、常に新しいアイデアと知的探求心に満ちた創作を続け、晩年に至るまで数多くの独創的な管弦楽作品を生み出しました。そして、2013年6月10日にアメリカ合衆国ペンシルベニア州ピッツバーグにてその生涯を閉じました。
【本日のご紹介曲:管弦楽のための協奏曲】
バルトークやルトスワフスキといった先人たちも同名の傑作を残している伝統的なタイトルですが、アセンホの作品は過去の協奏曲の概念とは異なり、特定の独奏楽器(ソリスト)を前面に出すものではありません。オーケストラ全体がフルに駆使されるシンフォニックな作品でありながら、楽曲の要所要所でオーケストラを構成する様々な種類の楽器がそれぞれの「ソロ・パート」を担当するという特徴を持っています。
全3楽章(第1楽章:約4分38秒、第2楽章:約5分40秒、第3楽章:約5分27秒)で構成されており、オーケストラの多彩な響きと色彩感が万華鏡のように展開されます。形式的な繰り返しを極力排し、絶えず新しいアイデアや主題が有機的につながっていくアセンホの音楽哲学が存分に味わえる充実したオーケストラ曲です。
【聴きどころ】
1)ソリストを置かないオーケストラ全体の躍動
伝統的な協奏曲のように特定のスター独奏者が主役になるのではなく、オーケストラ全体が一体となって音楽を紡ぎ出します。
2)楽器ごとにスポットライトが当たる瞬間
曲の随所で、普段はオーケストラの中に埋もれがちな個々の楽器や楽器群が鮮やかなソロ・パートを担当し、色彩豊かな表情を見せます。
3)絶え間なく変化し発展する音楽の流れ
同じメロディの繰り返しに頼らず、次々と新しい主題や響きが自然なつながりで展開していく、高い密度とスピード感のある音のドラマが楽しめます。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
アセンホ、フロレンシオ:管弦楽のための協奏曲
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