一日一曲(1979)バティスト、アントワーヌ=エドゥアール:嵐
本日は、没後150年(1876年11月9日没)を迎えられたフランスの作曲家、アントワーヌ=エドゥアール・バティストさんの曲をご紹介します。
【アントワーヌ=エドゥアール・バティスト:祈りの静けさから轟く雷鳴まで、巨大な楽器に秘められた響きを自在に解き放ち、19世紀のパリを魅了した「オルガンを飼いならす者」】
アントワーヌ=エドゥアール・バティスト(Antoine-Édouard Batiste)は、1820年3月28日、フランスのパリに生まれました。幼い頃から音楽教育を受け、パリ音楽院ではソルフェージュ、和声、対位法とフーガ、オルガンなどを学び、各分野で優秀な成績を収めました。作曲をアレヴィに学び、1840年にはローマ賞の第2等賞を獲得しています。
1842年にパリのサン=ニコラ=デ=シャン教会のオルガニストとなり、1854年にはサン=トゥスタッシュ教会の大オルガン奏者に就任しました。同教会の大規模な楽器を自在に操る演奏によって名声を高め、「オルガンを飼いならす者」とも呼ばれました。各地のオルガン披露演奏にも招かれ、合唱指揮や音楽院での指導など、幅広い活動を展開しました。
教育者としては、とりわけソルフェージュの指導と教材の整備に力を注ぎました。初学者が段階的に学べる教材や、広く利用できる普及版の刊行にも取り組み、音楽教育の裾野を広げました。また、礼拝のためのオルガン曲や編曲を数多く残し、その作品は国外にも広まりました。1876年11月9日、パリで56歳の生涯を閉じました。演奏、作曲、教育の三つの分野を通じて、19世紀フランスの音楽文化を支えた音楽家です。
【本日のご紹介曲:嵐《奉献曲―幻想曲》Op.23】
本曲は、パイプオルガン独奏のための作品で、原題は《Offertoire – Fantaisie – Orage》といいます。英語では《The Storm》としても知られ、1862年に出版されました。「奉献曲」とは、ミサでパンとぶどう酒などを捧げる場面に関わる音楽を指しますが、本曲には、オルガンの豊かな表現力を示す幻想曲としての性格もあります。
19世紀のフランスでは、オルガンで雷雨や嵐を描き出す音楽が親しまれました。バティストも本曲の説明文で、宗教的な性格を保ちながら嵐を表現することに意義を見いだし、オルガンの幅広い可能性を聴かせようとしています。教会に響く楽器の威容と、自然の圧倒的な力とを結びつけた作品といえるでしょう。
曲は、複数の楽章に分かれるのではなく、性格の異なる部分をつなぐ幻想曲として展開します。とりわけアレグロの部分には、フランス語で「雷」を意味する「Tonnerre」という指示が繰り返し現れます。音楽の流れに雷鳴の効果を織り込み、オルガンを自然の力まで表現できる楽器として扱っている点が特徴です。壮大な響きを楽しむとともに、音の動きや響きの変化から、どのような空模様が思い浮かぶかを味わいたい作品です。
【聴きどころ】
1)雷鳴を思わせる響き
まず注目したいのは、作曲者が「雷」と指定した音響効果です。旋律や和声の流れの中へ雷鳴が入り込むことで、音楽の緊張感や空間の印象がどのように変わるかに耳を傾けてみてください。オルガンが、自然の脅威を感じさせるほどの迫力を備えていることに驚かされます。
2)音色と音量が生み出す遠近感
オルガンの響きの変化を、近くで鳴る雷や遠くに広がる空模様に重ねて聴くのも楽しみ方の一つです。大きな音の迫力だけでなく、控えめな響きとの対比にも注目してみてください。目に見える情景を決めつけず、響きから自由に風景を思い描くことで、作品の奥行きを楽しめます。
3)自然描写と宗教的な荘厳さの結びつき
バティストが目指したのは、宗教的な表現としても意味を持つ嵐の音楽でした。自然の激しさを思わせる響きが、教会の楽器ならではの荘厳さとどのように結びつくかを味わってみてください。雷鳴の迫力の向こうに、人間を超えた大きな存在への畏敬を感じながら聴くこともできるでしょう。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
バティスト、アントワーヌ=エドゥアール:嵐
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