一日一曲(1978)フィリッツ、フリードリヒ:Holy Father Cheer Our Way

 本日は、没後150年(1876年12月8日没)を迎えられたドイツの作曲家・音楽学者、フリードリヒ・フィリッツさんの作品をご紹介します。

【フリードリヒ・フィリッツ:16~17世紀の教会音楽の発掘と研究に尽力し、古いコラールの魅力をよみがえらせるとともに、親しみやすい賛美歌旋律を後世に残した、19世紀ドイツの作曲家・音楽学者】
 フリードリヒ・フィリッツ(Friedrich Filitz)は、1804年3月16日、ドイツ中部テューリンゲン地方のアルンシュタットに生まれました。若い頃に哲学を学び、博士号を取得しましたが、やがて音楽の歴史、とりわけ古い教会音楽の研究と普及に情熱を注ぐようになりました。
 1830年代にはベルリンで音楽批評などに携わり、作曲家としての活動と並行して、過去の音楽作品の収集・研究を進めました。当時のドイツでは、バッハ以前の音楽や宗教改革以来のプロテスタント教会音楽を再評価する動きがあり、フィリッツもこうした歴史的音楽遺産の復興に重要な役割を果たしました。
 1845年には音楽教育者・収集家のルートヴィヒ・エルクと協力し、16~17世紀の著名な作曲家による四声コラールを集めた『Vierstimmige Choralsätze der vornehmsten Meister des 16. und 17. Jahrhunderts』を出版しました。この曲集は、忘れられつつあった古い宗教音楽を、当時の合唱団や教会で再び演奏できるようにするものでした。
 1847年には『教会と家庭のための四声コラール集(Vierstimmiges Choralbuch zum Kirchen- und Hausgebrauch)』を出版しました。この曲集には、本日ご紹介する賛美歌の旋律の原型も収められています。同年、ミュンヘンへ移り、その後も教会音楽の研究や楽譜の編集に取り組みました。1853年には古い教会音楽についての研究書も著しています。
 フィリッツが収集した貴重な教会音楽資料は、現在もミュンヘンのバイエルン州立図書館に伝えられています。1876年12月8日、ボンで72歳の生涯を閉じました。その功績は、自身の作品だけでなく、過去の音楽文化を未来へと橋渡ししたことにもあります。

【本日のご紹介曲:賛美歌《聖なる父よ、われらの道を照らしたまえ》(Holy Father, Cheer Our Way)】
 本曲は、フィリッツの賛美歌旋律《ケープタウン(CAPETOWN)》に、イギリスの聖職者リチャード・ヘイズ・ロビンソン(Richard Hayes Robinson)が1869年に書いた英語の歌詞を組み合わせた賛美歌です。
 旋律の原型は1847年に出版されたフィリッツの『教会と家庭のための四声コラール集』に収められ、もともとはドイツ語の賛美歌《永遠の朝の輝き(Morgenglanz der Ewigkeit)》のために用いられていました。その後、イギリスにも伝わり、英語の賛美歌として広く親しまれるようになりました。
 歌詞は全4節からなり、父なる神、救い主キリスト、聖霊、そして三位一体の神へと祈りを捧げます。「夕暮れにも光を与えたまえ」という願いが繰り返され、日々の終わりを迎える安らぎとともに、人生の晩年や死を前にしても失われない信仰の希望が歌われています。
 旋律は簡潔で親しみやすく、各節が7・7・7・5音節の4行から構成される特徴的な形式を持っています。穏やかな旋律の流れと端正な和声が、祈りに満ちた歌詞を優しく包み込みます。

 今回の演奏は、デイヴィッド・ウィルコックス指揮、ケンブリッジ・キングズ・カレッジ聖歌隊、サイモン・プレストンのオルガンによるものです。によるものです。長い歴史を誇るイギリスの名門聖歌隊による合唱を通して、19世紀の賛美歌が持つ素朴な美しさと深い精神性を味わうことができます。

【聴きどころ】
1)穏やかで親しみやすい旋律
 流れるような旋律と自然なフレーズのまとまりに注目です。華美な装飾を避けた簡潔な音楽が、夕暮れの静けさと祈りの安らぎを表現しています。

2)端正な和声と合唱の響き
 各声部が支え合う伝統的な賛美歌の和声に注目です。キングズ・カレッジ聖歌隊の清澄な高音と豊かな低音が重なり、オルガンの響きとともに、簡潔な旋律に奥行きと温かみを与えています。

3)「夕暮れの光」に込められた祈り
 各節で繰り返される「夕暮れの光」という言葉に注目です。一日の終わりから人生の終わりへと広がっていく歌詞の意味を感じながら聴くと、穏やかな音楽の奥にある深い希望と慰めが伝わってきます。

NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
フィリッツ、フリードリヒ:Holy Father Cheer Our Way

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