一日一曲(1736)ラッグルズ、カール:人と山
本日は、生誕150年(1876年3月11日生)を迎えらえたアメリカの作曲家、カール・ラッグルズさんの曲をご紹介します。
【カール・ラッグルズ:一音に魂を刻んだ、アメリカ音楽界の孤高の「音の彫刻家」】
カール・ラッグルズは、1876年3月11日、マサチューセッツ州マリオンのバザーズ湾に面した町で、漁師の息子として生まれました。幼少期、彼は自家製の弓と、シガーボックスで作ったバイオリンで音楽に親しむ、直感的な少年時代を過ごします。家族でボストン近郊へ移った後は、劇場オーケストラでバイオリンを弾き、どんな状況でも演奏を止めないという「現場の技術」を身につけました。その後、ハーバード大学で講義を聴講したり、造船工学を学んだりと、多様なバックグラウンドを持ちながら音楽の道を志します。
1908年には、才能あるソプラノ歌手のシャーロット・スネルと結婚しました。彼女はラッグルズの生涯における最大の理解者であり、代表作のタイトルを提案するなど、彼の創作活動を精神的に支え続けました。ラッグルズは極端なまでの完璧主義者であり、自らに「不協和対位法」という厳格なルールを課しました。これは、同じ音が一定期間(通常7〜10音程度)繰り返されないように旋律を編む手法で、彼は一音の響きを決定するために数年を費やすこともありました。納得がいかない初期の作品は自ら破棄してしまい、現存する作品はわずか12曲ほどに過ぎません。
紙袋やシャツの台紙にまで楽譜を書き殴り、彫刻家のように音を削り出す彼の姿は、チャールズ・アイヴスらと共にアメリカ近代音楽の象徴となりました。晩年は画家に転身し、音楽と同様に力強い抽象画を数多く残しています。身体が不自由になっても「精神は不屈(unvanquished)だ」と語り、頭の中で作曲を続けていた彼は、1971年10月24日、バーモント州ベニントンの療養所にて95歳でその波乱に満ちた生涯を閉じました。
【本日のご紹介曲:『人と山』 (Men and Mountains, 1924年)】
【聴きどころ】
1)第1楽章「人」:妥協なき力強さ
冒頭から、鋭い不協和音が連続する妥協のない響きが突きつけられます。人間の不屈の意志が宇宙に向かって叫んでいるかのような、荒々しくも気高いエネルギーに満ちています。
2)第2楽章「ライラック」:ニューイングランドの哀愁
弦楽器のみで奏でられる、静かで神秘的な楽章です。かつて南北戦争で帰らぬ人となった若者たちの住居跡に咲く、ライラックの花の香りを想起させるような、繊細で物悲しい美しさが漂います。
3)第3楽章「行進する山々」:雄大な自然の鼓動
複雑なリズムと強烈なアクセントが多用され、山々が意志を持って動き出すかのようなダイナミックな響きが特徴です。緻密に計算されたメロディが重なり合い、巨大なエネルギーのうねりとなって押し寄せます。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
ラッグルズ、カール:人と山
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