一日一曲(1807)カトゥアール、ゲオルギー:3つの小品

 本日から5回にわたって、没後100年(1926年5月21日没)を迎えらえたロシアの作曲家、ゲオルギー・カトゥアールさんを特集いたします。

第1日:数学の論理と音楽の感性 —— 運命を変えた助言
 数学者としての将来を嘱望されながら、チャイコフスキーの導きで音楽の道へと転じたロシアの知性派作曲家

 ゲオルギー・カトゥアール(1861年4月27日 モスクワ生 – 1926年5月21日 モスクワ没)は、19世紀初頭にフランスから移住した実業家の家庭に生まれました。幼少期よりベルリンで名教師クリントヴォルトにピアノを学び、非凡な才能を示しましたが、当初は学問の道を志します。1884年、彼はモスクワ大学を数学の最優秀成績で卒業しました。しかし、音楽への情熱を捨てきれず、自作の譜面を携えて当時の巨匠チャイコフスキーを訪ねます。
 カトゥアールの作品を一読したチャイコフスキーは、その独創的な和声感覚と洗練された感性に驚愕し、「君は音楽に専念すべきだ。ただし、君の才能を確かなものにするために、厳格な理論修行を行いなさい」と強く助言しました。この出会いがカトゥアールの運命を決定づけます。彼はリムスキー=コルサコフらに師事し、数学的な分析力を武器に音楽理論を深く掘り下げていきました。初期の作品には、チャイコフスキー譲りの叙情性と、論理的な構造美が同居しています。

【本日のご紹介曲:3つの小品 (Trois morceaux) Op.2(1888年出版)】
 チャイコフスキーがその完成度の高さに驚き、出版を強く勧めたカトゥアールの公式なデビュー作です。サロン音楽の域を超えた、ポスト・ワーグナー的な緻密な書法の萌芽が見られます。

【聴きどころ】
1)第1曲「内なる歌 (Chant intime)」
 わずか28小節の短い作品ですが、絶え間なく変化し続ける旋律の線(トレーサリー)が、非常に洗練された形で構築されています。後のカトゥアールの特徴となる、シンプルながらも深みのある和声の動きが凝縮された逸品です。
2)第2曲「故郷を離れて (Loin du foyer)」
 波打つような中音域の伴奏に乗せて、即興的な雰囲気(quasi improvisato)で展開されます。数学的な厳密さを持ちつつも、タイトルが示すような郷愁や内省的な感情が、複雑に絡み合う声部から溢れ出します。
3)第3曲「冬の夜 (Soirée d’hiver)」
 3曲の中で最も規模が大きく、劇的な性格を持ちます。中間部では「5/8拍子」という変拍子や、非常に珍しい「変ハ長調」を用いるなど、チャイコフスキーを唸らせた革新的な試みが見どころです。冬の厳しい情景と、温かな思索が交錯するような深遠な響きを体験できます。

NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
カトゥアール、ゲオルギー:3つの小品

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