一日一曲(1842)ムリニエ、エティエンヌ:様々な鳥たちのコンセール

 本日は、没後350年(1676年没)を迎えらえたフランスの作曲家、エティエンヌ・ムリニエさんの曲をご紹介します。

【エティエンヌ・ムリニエ:フランスの宮廷を彩るエール・ド・クール(宮廷の歌曲)の世界において、人間の情熱やユーモアを多彩な表情で描き出した天才メロディメーカー】
 エティエンヌ・ムリニエは1599年10月10日、フランス南部のラングドック地方にあるカルカソンヌ近郊の町ロラン(現在のロール=ミネルヴォワ)に生まれました。少年時代はナルボンヌ大聖堂の少年聖歌隊員として歌い、そこで基礎的な音楽教育や宗教教育を徹底的に叩き込まれました。その後、すでに宮廷音楽家として成功を収めていた兄のアントワーヌ・ムリニエの熱心な引き立てや影響もあり、若くしてパリの宮廷へと進出する好機を掴みます。
 宮廷入りを果たしたムリニエは、国王ルイ13世の気まぐれな実弟であるオルレアン公ガストンの音楽監督(インテンダント)という大役に抜擢されました。この独創性に満ちた作曲家は、公爵の宮廷のために世俗的な歌曲から大規模なバレエ音楽、さらには宗教曲まで多岐にわたる作品を次々と生み出し、宮廷内で不動の地位を築き上げていきました。また、公爵の娘である「マドモアゼル・ド・モンパンシエ」の音楽教師も務めるなど、一族から非常に厚い信頼を寄せられていたことでも知られています。
 1660年に主君であるオルレアン公が亡くなった後も、ムリニエは数年間その宮廷組織に留まり、追悼の音楽法要を主導してその美しい調べで参列者たちを深く感動させました。晩年は故郷であるラングドック地方へと戻り、同地方の身分制議会の音楽監督を務めるなど、地域に根ざした活動を続けました。そして1676年、議会での重要な式典で「テ・デウム(神よ、あなたを讃えます)」の指揮を執ったのを最後の晴れ舞台とし、同年、旅の途中とも言われる謎に包まれた状況の中で、76歳前後の波乱に満ちた生涯を閉じました。

【本日のご紹介曲:「様々な鳥たちのコンセール(Concert de différents oyseaux)」】
 この楽曲は、ムリニエがオルレアン公の宮廷で頭角を現し始めた極めて初期の1624年に作曲された、瑞々しい魅力に溢れた歌曲(エール・ド・クール)です。もともとは同年に宮廷で上演された『あべこべの世界のバレエ(Ballet du monde renversé)』という舞台作品のために書かれたエール・ド・バレエ(バレエのための歌曲)であり、翌1625年に出版された彼の曲集に収められました。
 タイトルにある「コンセール(協奏、合奏)」が示す通り、自然界の鳥たちのさえずりを音楽で模倣するという、当時のフランス宮廷で非常に愛された趣向が取り入れられています。歌詞の中では、茂みの鳥たちに向かって「愛の悲しみに暮れる私の切ない歌を聞いて、一緒に嘆いておくれ」と語りかける、優雅で少し甘美な痛みを伴う愛の世界が展開されます。

【聴きどころ】
1)鳥のさえずりを模した鮮やかな歌唱表現
 歌い手がまるで森の中でさえずる小鳥たちのように、軽やかで素早い装飾音符を散りばめながら歌う部分が最大の魅力です。言葉の響きとメロディが一体となり、目の前に色彩豊かな自然の情景が浮かび上がります。
2)恋の切なさを描き出す繊細なメロディライン
 鳥たちの賑やかな交歓とは対照的に、恋人の冷酷さに苦しむ主人公の「切ない訴え」が、フランス音楽特有の気品に満ちた哀愁漂う美しい旋律によってエモーショナルに表現されています。
3)古楽器が織りなす色彩豊かな伴奏の響き
 歌声を支えるリュートやテオルボ、ヴィオラ・ダ・ガンバ、バロックハープといった当時の楽器たちが、鳥の声の模倣や主役の歌唱に寄り添い、優雅で幻想的なアンサンブルの空間を作り上げます。

NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
ムリニエ、エティエンヌ:様々な鳥たちのコンセール

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