一日一曲(1879)コーン、カール:回想
本日は、生誕100年(1926年8月1日生)を迎えらえたオーストリアの作曲家、カール・コーンさんの曲をご紹介します。
【(作曲者名):伝統的な西洋音楽の遺産と現代主義の語法を織り交ぜ、独自の美しい響きを探求し続けた名匠】
カール・コーン(Karl Kohn)は、1926年8月1日にオーストリアのウィーンで生まれました。幼少期からピアノに親しんでいましたが、13歳の時にナチスの迫害を逃れてアメリカへと移住します。新天地で音楽の道を志した彼は、ニューヨーク音楽学校やハーバード大学で学び、ウォルター・ピストンやアーヴィング・ファイン、ランドル・トンプソンといったアメリカ屈指の音楽家たちから熱心な指導を受けました。
1950年からはカリフォルニア州のポモナ・カレッジで教鞭を執るようになり、1994年に退職するまで40年以上にわたって理論や作曲の指導にあたりました。彼は教育活動と自身の創作活動のバランスを非常に大切にし、それが自身の音楽を親しみやすいものにしたと語っています。また、1950年に結婚した妻のマーガレットとともに、国際的なデュオ・ピアニストとしても精力的に活動し、20世紀の重要な現代作品を世に広めました。彼の作品はロサンゼルス・フィルハーモニックをはじめとする数々の主要なオーケストラによって演奏され、グッゲンハイム財団や全米芸術基金(NEA)から多数の助成金を受けるなど、アメリカ現代音楽界で確固たる地位を築くことになります。ユーモアのセンスにあふれ、どんな場面でもジョークの引き出しを欠かさなかったその温かな人柄は、多くの同僚や学生たちから深く愛され続けました。
現役を退いた後も創作への情熱を失わず、亡くなる直前まで意欲的に活動を続け、晩年もポモナ・カレッジの吹奏楽団の演奏会に夫婦で足を運ぶなど、生涯現役の音楽家であり続けました。そして2024年11月18日、長年住み慣れたカリフォルニア州クレアモントの地にて、多くの家族や音楽仲間に見守られながら98歳でその天寿を全うしました。
【本日のご紹介曲:回想(Recollections)】
本曲は2021年にフルートとピアノのために作曲された、演奏時間約3分40秒の小品です。彼の長年の友人であり、卓越した技術を持つフルーティストのレイチェル・ルディッチ(ルディック / NML等ではラディックと表記)のために書かれました。
コーン自身が「私の作曲家としての歴史を反映し、思い出させてくれる作品」と語るように、1950年代のハーバード大学時代に学んだ新古典主義的なアプローチから、1960年代以降に彼が展開してきた自由な無調(アトナル)スタイルにいたるまで、60年以上に及ぶ彼の創作の軌跡が一つの trajectory(軌道)として結晶化した、まさに文字通りの「回想」となる一曲です。
本日は、本曲を献呈されたフルーティストと作曲者自身の伴奏による演奏でお聴きください!
【聴きどころ】
1)フルートとピアノが紡ぐ、自由で色彩豊かなダイアローグ
完全に調性に縛られない自由なスタイルでありながら、フルートの美しい旋律とピアノの響きが自発的に会話を交わすような、ドラマチックで即興的な展開が魅力です。
2)凝縮された60年の創作スタイル
初期のロマンティシズムや新古典主義的なアプローチ、そして後年の洗練された現代的な無調表現といった、彼が歩んできた様々な音楽的遺産が、わずか3分半ほどの緊密な構成の中に自然に溶け込んでいます。
3)作曲家自身のピアノとルディッチのフルートによる至高の呼吸
アルバムでは作曲者自身が95歳(録音当時)でピアノを演奏しており、長年コラボレーションを重ねてきたルディッチのフルートと一体となり、深く内省的で味わい深い響きを聴かせてくれます。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
コーン、カール:回想
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