一日一曲(1931)スミス、ウィリアム・O:無伴奏クラリネットのための5つの小品
本日は、生誕100年(1926年9月22日生)を迎えられたアメリカの作曲家、ウィリアム・O・スミスさんの曲をご紹介します。
【ウィリアム・O・スミス:クラシックとジャズの境界線を越え、前衛的な特殊奏法で管楽器の可能性を極限まで押し広げた真の開拓者】
ウィリアム・O・スミス(ジャズ分野ではビル・スミス)は、1926年9月22日にアメリカのカリフォルニア州サクラメントで生まれました。10歳でクラリネットのレッスンを始めるとすぐに才能を開花させ、小学生の頃にはすでにダンスバンドを結成していました。さらに15歳になる頃にはプロとして演奏活動を始め、自身初となる木管五重奏曲を書き上げるという驚くべき早熟ぶりを発揮します。
1945年に名門ジュリアード音楽院に入学しますが、在学中もニューヨークの52丁目で頻繁にジャズを演奏し、さらにユース・オーケストラにも所属するなど、ジャンルにとらわれない活動を展開しました。その後、ミルズ・カレッジに進学し、ここで彼の音楽人生を決定づけるジャズ・ピアニストのデイヴ・ブルーベックと出会います。彼のオリジナル・オクテットに参加して約6枚のアルバムを録音し、ジャズとクラシックの融合を体現していきました。1952年にはカリフォルニア大学で修士号を取得しています。
また、ロジャー・セッションズやダリウス・ミヨーといった巨匠たちに作曲を師事し、ヨーロッパのパリ音楽院でも学びました。1951年から1953年にかけてはパリ賞を受賞して同地に滞在し、1957年のローマ賞、1960年の2度のグッゲンハイム奨学金など、数々の栄誉ある賞を獲得しています。
1966年からはワシントン州のシアトルにあるワシントン大学で教鞭を執り始め、教師、作曲家、演奏家としての活動を見事に両立させました。生涯を通じて楽器の限界に挑み続けた彼は、2020年2月29日、長年活動の拠点としたワシントン州シアトルの地で93歳の生涯を閉じました。前衛音楽とジャズを自在に行き来した彼の功績は、今も色褪せることがありません。
【本日のご紹介曲:無伴奏クラリネットのための5つの小品】
1959年に作曲されたこの作品は、どんな名手にとっても至難の業と言えるような、華やかな技巧が散りばめられた一曲です。第1曲の冒頭に登場する4つの音が細胞(モチーフ)となり、そこから様々なリズムの変奏が展開されていきます。無伴奏という極めてシンプルな編成だからこそ、楽器そのものが持つ豊かな表現力と、ジャズにも通じる躍動感をダイレクトに味わうことができます。たった1本のクラリネットだけで演奏されるにもかかわらず、まるで複数の楽器が対話しているかのような錯覚に陥る瞬間や、ユーモアあふれるユニークな音響効果が随所に仕掛けられており、聴く者を飽きさせません。
【聴きどころ】
1)高音域と低音域の跳躍による「2つの旋律」の錯覚
なめらかで抒情的な第2曲の中間部では、スタッカートを用いた短いエピソードが登場します。ここでクラリネットの高音域(クラリオン音域)と低音域(シャリュモー音域)を素早く行き来する大きな跳躍が行われます。これにより、1本の楽器でありながら、まるで2つのメロディが同時に演奏されているかのような立体的な響きが生み出されます。
2)激しい強弱の変化とシンコペーション
「リズミック」という指示がある第3曲は、ジャズのシンコペーションのような独特のリズムが特徴です。最初の21小節だけで68回もの明確な強弱(ダイナミクス)の変更が指示されており、角張った音のまとまりがコラージュのように迫ってきます。
3)「替え指」が生み出す不思議なピッチ変化
同じく第3曲の最後では、作曲者が特別に指示した「替え指(フォールス・フィンガリング)」が用いられます。長く伸ばした2つの音に対して、通常の音程からシャープ(高め)、フラット(低め)、そしてまた元に戻るという、独特のピッチ変化による面白い音響効果を聴くことができます。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
スミス、ウィリアム・O:無伴奏クラリネットのための5つの小品
スミス、ウィリアム・O:無伴奏クラリネットのための5つの小品(CD)
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