一日一曲(1820)ステゴール、チャールズ:感謝と賛美の歌
本日は、生誕200年(1826年6月3日生)を迎えらえたイギリスの作曲家兼オルガニスト、チャールズ・ステゴールさんの曲をご紹介します。
【チャールズ・ステゴール:19世紀の英国教会音楽の復興に尽力し、気品ある賛美歌を紡ぎ出したオルガニスト】
チャールズ・ヘンリー・ステゴールは1826年6月3日、ロンドンの裕福な馬具製造業を営む家に生まれました。幼少期から音楽への高い関心を示し、ケンブリッジ大学のトリニティ・コレッジで学んだ後、21歳で王立音楽アカデミー(RAM)に入学します。そこで当時の英国音楽界の重鎮であったウィリアム・スターンデール・ベネットに師事し、ピアノ、和声、作曲、そしてオルガンを精力的に学びました。厳格ながらも師を深く敬愛していたステッガルは、早朝7時からレッスンを受け、その後師の仕事先まで共に歩むのが日課だったといいます。
1851年には、25歳の若さでケンブリッジ大学から音楽博士号(DMus)を授与され、同年より母校である王立音楽アカデミーのオルガンおよび和声の教授に就任しました。彼は1903年までの半世紀以上にわたり、後進の指導に情熱を注ぎました。
オルガニストとしての活動も華々しく、ロンドンのマイダ・ヒルのクライスト・チャペル(1847年〜)や、ランカスター・ゲートのクライスト・チャーチ(1855年〜)を経て、1864年からは名誉あるリンカーンズ・イン礼拝堂のオルガニストに任命され、その生涯を閉じるまでこの職を務め上げました。
また、彼は英国におけるJ.S.バッハの受容にも大きく貢献しました。師のベネットと共に「バッハ協会」の設立(1849年)に加わり、初代名誉秘書としてロンドンにおける「マタイ受難曲」の初演(1854年)を影で支えました。さらに、バッハのモテットの英国初版を編集するなど、当時の英国の教会音楽の質を高めるために尽力しました。
1864年には王立オルガニスト協会(RCO)の創設メンバーの21人に名を連ね、1887年からは著名な聖歌集『聖歌古今集(Hymns Ancient and Modern)』の編纂委員として、英国全土の礼拝音楽の発展に決定的な影響を与えました。
私生活では、息子のレジナルド・ステゴールも後に優れたオルガニスト・作曲家となり、父の跡を継いでリンカーンズ・イン礼拝堂の音楽監督を務めています。厳格でありながらも常に忍耐強く、優しい人柄で生徒に慕われたステゴールは、1905年6月7日、ロンドンのノッティング・ヒルにて79歳でその天寿を全うしました。
【本日のご紹介曲::『Songs of Thankfulness and Praise(感謝と賛美の歌)』】
チャールズ・ステゴールが1867年頃に発表した『Songs of Thankfulness and Praise』は、特に「顕現日(エピファニー)」の時期に世界中の教会で歌われる、気品と輝きに満ちた賛美歌です。この曲のメロディには「セント・エドマンド(St. Edmund)」という固有の賛美歌調名(Tune Name)が付けられており、聖歌集ではこの名前で親しまれています。
歌詞は、英国の聖職者クリストファー・ワーズワース(1807年〜1885年、詩人ウィリアム・ワーズワースの甥)が1862年に出版した聖歌集『Holy Year』のために書き下ろしたものです。キリストが星に導かれて現れたこと、ヨルダン川での洗礼、カナの婚礼での最初の奇跡など、キリストがその神性を人々の前に顕わにした数々の場面が生き生きと描写されています。ステゴールのつけた堂々とした、それでいて温かみのある旋律が、この壮大な感謝の詩に見事な色彩を与えています。
【聴きどころ】
1)人々の心を一つにする、端正で力強い4拍子
曲の冒頭から、迷いのない力強く引き締まったリズムが刻まれます。奇をてらわない堅実な順達(音が隣り合うように滑らかに動く形)のメロディは、誰もがすぐに口ずさめる親しみやすさを持っています。教会に集う会衆全体が声を合わせて神への感謝を歌い上げる、キリスト教音楽の原点ともいえる美しさを感じられます。
2)厳かで知的な「英国風」和声の響き
ステッガルは、バッハの伝統的なコラール(賛美歌)の語法に深く影響を受けていました。そのため、単に明るいだけでなく、ヴィクトリア朝の英国音楽らしい、内声(アルトやテノール)が複雑に美しく絡み合う高尚な響きが特徴です。ソプラノの主旋律の後ろで動く重厚なハーモニーに耳を傾けると、曲の奥深さがより一層引き立ちます。
3)キリストの物語と連動する劇的な高揚感
歌詞は、キリストの生涯における様々な「奇跡」を語りながら展開していきます。曲の後半に向かって、和声の緊張感とオルガンの伴奏の響きが徐々に増していき、最後の「父と子と聖霊に栄光あれ」という三位一体の神への讃美(頌栄)に向けて、最高潮の盛り上がりを見せるドラマチックな構成が見事です。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
ステゴール、チャールズ:感謝と賛美の歌
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