一日一曲(1878)ゼーリヒ、ダニエル:主に向かって新しき歌を歌え
本日は、没後400年(1626年没)を迎えらえたドイツの作曲家、ダニエル・ゼーリヒさんの曲をご紹介します。
【ダニエル・ゼーリヒ:ヴェネツィア派の華麗な多声法をドイツの地へと受け継ぎ、色彩豊かな聖歌コンサートでバロックの幕を開けた開拓者】
ダニエル・ゼーリヒ(ラテン語名:ダニエル・ゼーリヒウス)は、1581年にドイツ東部の宗教改革ゆかりの地、ヴィッテンベルクで画家の息子として生まれました。1601年にはヴィッテンベルク大学に籍を置いて学び、早くからルター派の信仰と高い教養を身につけていきます。音楽家としてのキャリアを本格化させた彼は、ドレスデン近郊にあるウェーゼンシュタイン城を拠点とするビューナウ伯爵のもとで最初の職を得ました。この城は当時、壮麗なルネサンス建築へと改築されている最中であり、ゼーリヒはここで領主の野心的な権威を音楽で表現する役割を担い、実力を蓄えていったのです。その後、1616年から1617年にかけて、音楽に深い関心を寄せていたブレーメン=フェルデン司教宮廷の楽長を務めました。
彼の人生の大きな転機は1621年に訪れます。司教の推薦により、北ドイツの音楽の要所であったヴォルフェンビュッテルの宮廷楽団で、偉大な先任者ミヒャエル・プレトリウスの後継者として宮廷楽長に抜擢されたのです。当時のヴォルフェンビュッテルは、三十年戦争の足音が近づく不安定な情勢にありましたが、奇跡的に芸術文化が花開いた「ミューズの宮廷」でした。ゼーリヒはこの地で、自身のほぼ唯一の現存作となる全24曲の教会コンサート集『新曲集(Opus novum)』を1623年から1624年にかけて出版します。これは、当時イタリアから流入していた最先端の合唱技法をいち早く取り入れ、聖書の言葉を鮮やかに描いた先駆的な傑作でした。しかし、この大きな成果の直後、三十年戦争の混乱と疫病の波が街を襲います。ゼーリヒは平穏な時代の終焉とともに、1626年に45歳という若さでこの世を去りました。
【本日のご紹介曲:主に向かって新しき歌を歌え(7声)】
ゼーリヒの代表作である『新曲集』の第1曲目を飾る、非常に晴れやかで躍動感に満ちた教会コンサートです。聖書の「詩篇第96篇の第1節から第4節」をテキストに用いており、神への感謝と喜びがストレートに響く名曲です。
【聴きどころ】
1)3人の歌手と4つの楽器が織りなす「7声」の立体感
この曲は、3人の独唱者と4つの楽器、そして全体を支える通奏低音( Continuo )という緊密な編成で書かれています。声楽と器楽がたがいに引き立て合いながら、まるで目の前で音が交差するような立体的な響きを味わうことができます。
2)「新しい歌」の歓喜を表す、弾むようなリズム
冒頭から「主に向かって新しき歌を歌え」という歌詞に合わせ、非常に軽快で弾むような3拍子のリズムが展開します。言葉の持つエネルギーがそのまま音楽の推進力となっており、聴いているだけで心が弾むような明るさに満ちています。
3)言葉の意味を音で描き出す「音画技法」の妙
ゼーリヒは歌詞の言葉ひとつひとつをとても大切にしています。「歌う」「響き渡る」「叫ぶ」といった、喜びを表現する言葉の数々が、当時の最先端のイタリア的な感性によってドラマチックに味付けされており、そのドラマの展開に引き込まれます。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
ゼーリヒ、ダニエル:主に向かって新しき歌を歌え
ゼーリヒ、ダニエル:主に向かって新しき歌を歌え(amazon music)
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