一日一曲(1899)ジフリン、マリリン:ピアノソナタ第2番

 本日は、生誕100年(1926年8月7日生)を迎えらえたアメリカの作曲家、マリリン・ジフリンさんの曲をご紹介します。

【マリリン・ジフリン:伝統的な古典形式の骨組みにジャズのノリとあたたかな叙情性を注ぎ込んだ自由闊達な音楽家】
 マリリン・J・ジフリンは、1926年8月7日にアメリカ・イリノイ州モーリーンで生まれました。幼少期から音楽的才能を示した彼女は、マディソンにあるウィスコンシン大学で本格的に音楽教育を受け、その後ニューヨークのコロンビア大学大学院へ進学して研鑽を積みました。
 彼女の音楽的礎を築いたのは、著名なロシア出身の作曲家アレクサンダー・チェレプニンやカール・アーレントといった優れた師たちによる指導でした。師から授かった緻密な対位法やフォルムの感覚は、彼女の作品全体を支える強い骨格となります。
 大学卒業後はニューハンプシャー州を拠点に作曲家および教育者として精力的な活動を展開しました。彼女のユニークで詩情豊かな音楽は多くのクラシック音楽関係者を魅了し、ニューハンプシャー音楽祭やアメリカ・オルガニスト協会、ホープ・カレッジ演奏合唱団、コンコード合唱団など、多様なアンサンブルや団体から相次いで作品の委嘱を受けました。
 彼女の実績は高く評価され、1972年には優れた作品に贈られるデリウス作曲賞を受賞し、2007年にはその長年の芸術的貢献に対してニューハンプシャー州知事芸術賞(ロッテ・ヤコビ・リビング・トレジャー賞)が授与されるなど、現代アメリカ音楽界で確固たる地位を確立しました。
 ジフリンの溢れる才能は作曲の領域だけに留まりませんでした。彼女は文筆家としても非凡な手腕を発揮し、アメリカの異色な現代作曲家カール・ラッグルズの緻密な伝記『Carl Ruggles: Composer, Painter, Storyteller』を執筆・出版しました。イリノイ大学出版局から刊行されたこの著作は、音楽史的にも貴重なドキュメントとして高い評価と絶賛を博しました。
 晩年まで創作への情熱を失うことなく、ニューハンプシャー州Bradfordの自宅で意欲的に作品を生み出し続けた彼女は、2018年3月16日に同州にて91歳でその豊かな生涯を閉じました。

【本日のご紹介曲:ピアノソナタ第2番(2012年作曲)】
 ジフリンが85歳を過ぎた最晩年に書き上げた《ピアノソナタ第2番》は、難解になりがちな現代音楽のイメージを覆す、極めて素直で親しみやすい語り口を持った3楽章構成の作品です。批評家から「無駄がなくストレートで、調性感をベースにしながらも時折ジャズのエスプリが顔を出す、まさにアメリカ的な響き」と称賛された彼女独自のスタイルが見事に結実しています。
 急—緩—急の伝統的な3楽章形式を踏襲し、各楽章がいずれもすっきりとした三部形式(A-B-A)で組み立てられているため、楽曲全体の構図を捉えやすいのが大きな魅力です。
  第1楽章:モデラート(Moderato)
  第2楽章:スローリー(Slowly)
  第3楽章:プレスト(Presto)

【聴きどころ】
1)伝統的な形式がもたらす「圧倒的な見通しの良さ」
 すべての楽章が「A-B-A」の明快な三部形式で書かれています。冒頭で提示された主旋律が中間部を経て再び戻ってくる構造が極めてクリアなため、展開に迷うことなく安心して音の移ろいを楽しむことができます。

2)心地よいトナリティと「ジャジーで軽快なリズム」
 前衛的な不協和音だけに傾倒せず、耳になじみやすい旋律や調性感が大切にされています。そこにふと織り込まれるジャズ風の軽やかなシンコペーションやおしゃれなコード感が、作品全体に新鮮な躍動感を与えています。

3)最晩年ならではの「研ぎ澄まされた簡潔な響き」
 人生の熟達期に書かれた本作は、過度な装飾や無駄な音符が極限まで削ぎ落とされています。非常にシンプルで素朴なテクスチュア(音の織りなす質感)だからこそ、響きの一音一音が持つあたたかみと深い詩情がストレートに響きます。

NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
ジフリン、マリリン:ピアノソナタ第2番

ジフリン、マリリン:ピアノソナタ第2番(amazon music)

\ 最新情報をチェック /

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です