一日一曲(1941)カプースチン:4楽章のディヴェルティメント

 本日はカプースチンさんの月命日ですので、カプースチンさんの作品をご紹介します。

【本日のご紹介曲:4楽章のディヴェルティメントOp.126】
 《4楽章のディヴェルティメント》Op.126は、2005年にヴァイオリン、チェロ、ピアノのために作曲された作品です。カプースチンは、それまで弦楽器とピアノの音色を一体化させることに難しさを感じ、伝統的なピアノ三重奏という編成を避けていたといいます。しかし、アーン・トリオからの委嘱をきっかけにこの編成へ本格的に取り組み、2006年9月にはアーン・トリオによってフロリダ大学で演奏されました。
 全4楽章は、第1楽章「Allegro」、第2楽章「Adagio」、第3楽章「Allegretto」、第4楽章「Allegro vivace」。
 「ディヴェルティメント」という軽やかな題名ながら、その内部には精巧な室内楽の仕掛けが詰め込まれています。最大の特徴は、伝統的なピアノ三重奏を、あたかもジャズ・コンボのように再構成していること。ブックレットでは、ジャズの「リズム・セクション」の役割をピアノとチェロに分担させながら、ヴァイオリンと主題的なやり取りを行わせていると説明されています。そのため、三つの楽器が絶えず役割を交換し、複雑に絡み合っているにもかかわらず、音楽は驚くほど自然に流れていきます。ジャズだけでなくロックやファンクを思わせる響きも顔をのぞかせる、明るく外向的でエネルギッシュな作品です。

【聴きどころ】
1)ピアノ三重奏が「ジャズ・コンボ」に変身する瞬間
 普通のピアノ三重奏なら、ヴァイオリンとチェロが旋律を担い、ピアノが和声や伴奏を支える場面が多くなります。ところがこの曲では、その役割分担がくるくると入れ替わります。とりわけ注目したいのがチェロです。低音を刻んでベースのようにリズムを支えたかと思えば、すぐに旋律側へ飛び出してきます。ピアノとチェロがジャズ・コンボのリズム隊を形成し、その上をヴァイオリンが走ると思った次の瞬間には、三者が対等に掛け合う。この「役割交換」の鮮やかさが作品最大の面白さです。

2)4楽章それぞれで変化するグルーヴ
 第1楽章《Allegro》では、冒頭から推進力の強いリズムが音楽を前へ押し出します。第2楽章《Adagio》になると空気が一変し、少し物憂く歌うような表情へ。MusicWebの評者は、この楽章に穏やかな「ラテン」の雰囲気も聴き取っています。第3楽章《Allegretto》ではリズムが再び軽やかになり、第4楽章《Allegro vivace》では勢いを増してフィナーレへ突入します。つまりテンポが単に「速い、遅い、速い」と変わるだけではなく、同じジャズ的語法の中でグルーヴの質感そのものが変化していくところに耳を向けると、4楽章構成の面白さがよく見えてきます。

3)即興演奏のように聴こえる「完全に組み立てられた音楽」
 カプースチンの魅力は、演奏者たちがその場でセッションを繰り広げているような自由さと、クラシック音楽らしい緻密な構築性が同居しているところです。この作品でも、突然飛び込んでくるアクセント、細かなシンコペーション、楽器同士の応酬などが即興的に聴こえますが、その背後には非常に精密な設計があります。ブックレットも、この作品を「複雑な楽器間の仕組みにもかかわらず、すべてが流れるように進む」と評しています。「いまアドリブしているのでは?」と思わせる自由さが、実は楽譜の中にきっちり設計されている。そこに耳を傾けると、カプースチンならではの職人芸がいっそう鮮明になります。

NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
カプースチン:4楽章のディヴェルティメント

カプースチン:4楽章のディヴェルティメント(Amazon Music)

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