一日一曲(1912)スティーヴンス、ロビン:黙想
本日は、本年(2026年)2月16日に逝去されました、イギリスの作曲家兼チェリスト、ロビン・スティーヴンスさんの曲をご紹介します。
【ロビン・スティーヴンス:英国の静謐な田園美と内省的な旋律を重ね合わせ、最期まで音楽へ情熱を注ぎ続けた音の探求者】
ロビン・スティーヴンス(Robin Stevens)は、1958年8月30日にウェールズのニューポートで生まれました。ピアニストであった母親の影響を受けて育ち、8歳からチェロを始めると、10代前半には早くも作曲の手ほどきを受け始めました。ダートイントン・カレッジ・オブ・アーツで学んだ後、1976年からはマンチェスターの王立ノーザン音楽院でラファエル・ソマーやモレイ・ウェルシュらにチェロを師事しました。さらに1980年からはバーミンガム大学の大学院に進学し、作曲家ジョン・ジューバートのもとで対位法や伝統的な形式美への造詣を深めました。
大学院修了後の1982年からは、ヨークにある聖ポール教会の音楽監督兼牧師スタッフとして5年間勤務し、礼拝のための合唱曲や聖歌を数多く作曲しました。その後、教員資格を取得してハリファックスの総合学校で音楽科教諭を務めましたが、1990年に重い病(ウイルス後疲労症候群)に見舞われ、約17年間という非常に長い休業と闘病生活を余儀なくされました。
長年の療養を経て2007年に見事な復活を遂げると、マンチェスター大学の博士課程に入学してフィリップ・グランジらのもとで現代的な大規模構造の研究に取り組みました。全快後は、それまでのブランクを埋めるかのように驚異的なペースで創作活動を展開します。エルガーやヴォーン・ウィリアムズといったイギリス音楽の豊かな伝統を基盤に、弦楽四重奏曲や各種協奏曲から親しみやすい小品に至るまで、約180曲に及ぶ作品群を生み出しました。
2023年に大腸がんの診断を受けてからも、強い信仰心と音楽への愛に支えられ、限られた時間の中で多くの未発表曲の出版整理や録音プロジェクトのプロデュースに全力を注ぎました。病と闘いながら最後までペンを握り続け、2026年2月16日、67歳で亡くなりました。
【本日のご紹介曲:黙想(Contemplation)】
本曲は、バス・リコーダーと弱音器(ミュート)を付けたチェロという、極めて珍しいデュオのために書かれたアンサンブル曲です。ヴォーン・ウィリアムズらに代表されるイギリス田園主義の豊かな叙情性に想を得て作られました。バス・リコーダーの包み込むような低音とチェロの抑えめな音色が溶け合い、非常に内省的で美しい音響空間を創り出しています。
【聴きどころ】
1)バス・リコーダーとミュート付きチェロによる独特の陰影
息の温もりがダイレクトに伝わるバス・リコーダーの深みのある音色と、弱音器で響きを抑えたチェロの音色が重なり、他では味わえない幻想的で静かな空気感を生み出しています。
2)密度の高いカノン技法がもたらす対話
曲の中盤(1分02秒付近や2分40秒付近)では、2つの楽器が互いの旋律を追いかけ合う密度の高いカノン技法(模倣対句)が用いられており、音の重なりによって空間に心地よい奥行きが生まれます。
3)特殊奏法が織りなすミステリアスな表情
リコーダーのフラッター・タンギング(巻き舌奏法)とチェロのトレモロ(細かな刻み)が同時に交差する場面では、素朴な田園風景の中に探求的でどこかミステリアスな表情が浮かび上がります。
本日の演奏は自作自演(チェロ)です!
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
スティーヴンス、ロビン:黙想
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