一日一曲(1811)カトゥアール、ゲオルギー:ピアノ四重奏曲イ短調
没後100年(1926年5月21日没)を迎えらえたロシアの作曲家、ゲオルギー・カトゥアールさん特集の五日目、最終日です。
第5日:静かなる終焉 —— 未来に響き続ける知性の音
流行に流されず、ただひたすらに「響きの理想」を追い求めた生涯
晩年のカトゥアールは、音楽院での激務の傍ら、静かに、しかし着実に創作活動を継続しました。1920年代、ソ連の音楽界が「大衆のための分かりやすい音楽」を求め始める中で、カトゥアールの書く高潔な音楽は、次第に時代から孤立していきます。しかし、彼は決して自らの芸術的信念を曲げることはありませんでした。
1926年5月21日、ゲオルギー・カトゥアールはモスクワでその生涯を閉じました。数学の論理とフランスの感性、そしてロシアの情熱を完璧なバランスで融合させた彼の音楽は、一時的に歴史の影に隠れましたが、その価値が失われることはありませんでした。近年、その「あまりに美しく、あまりに緻密な」作品群は、時を超えて世界中で再評価されています。カトゥアールのスコアには、数学者が追い求めた真理と、芸術家が夢見た美しさが、永遠の響きとなって刻まれているのです。
【本日のご紹介曲:ピアノ四重奏曲 イ短調 Op. 31(1916年)】
カトゥアールの室内楽の探求が最終的な到達点に達した、静かな情熱を秘めた名品です。
【聴きどころ】
1)透明感あふれる晩年の様式
初期の濃厚な響きから、より洗練され、透き通ったような響きへと変化しています。複雑な手法はそのままに、表現はより深遠なものになっています。
2)第2楽章の深い精神性
全作品の中でも特に高貴な美しさを湛えた楽章です。孤独な魂が静かに祈りを捧げるような、清冽な抒情性が印象的です。
3)強靭な美の表出
終楽章では、緻密な構成が圧倒的なエネルギーを伴って展開されます。感情を磨き上げられた形式の中に閉じ込めることで生まれる「強靭な美」を体験できます。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
カトゥアール、ゲオルギー:ピアノ四重奏曲イ短調
カトゥアール、ゲオルギー:ピアノ四重奏曲イ短調(amazon music)
|
|
