一日一曲(1833)カールステット、ヤン:バラード(Ballata)
本日は、生誕100年(1926年6月15日生)を迎えらえたスウェーデンの作曲家、ヤン・カールステットさんの曲をご紹介します。
【ヤン・カールステット:北欧の伝統とスラヴのエッセンスを融合させ、魂を揺さぶる響きを追い求めたスウェーデンの現代交響曲作家】
ヤン・カールステット(Jan Carlstedt)は、1926年6月15日にスウェーデン中部のダラルナ地方オルサに生まれました。彼は音楽家としてのキャリアの初期において、生まれ故郷であるダラルナの豊かな伝統的な民俗音楽(スピルマンスムジーク)から強いインスピレーションを受けて作曲を行っていました。しかし、彼の音楽的探求は自国の伝統だけに留まりませんでした。その後、東欧やロシアなどスラヴ系の作曲家たちの作品、とりわけドミトリー・ショスタコーヴィチの音楽から多大な影響を受けるようになります。さらに、ハンガリーの生んだ巨匠ベラ・バルトークの足跡を熱心に辿り、その音楽語法からも深く感化されました。
カールステットは室内楽曲や合唱曲の分野で優れた作品を数多く残していますが、彼の代表作として最もよく知られているのが、キング牧師に捧げられた交響曲第2番『ブラザーフッド(同胞の交響曲)』です。この作品に象徴されるように、彼の音楽には深い人間愛や社会的メッセージが込められていることが特徴です。
また、彼は優れた作曲家であったと同時に、スウェーデンの音楽界における重要なオーガナイザー(組織者)としても精力的に活動しました。現代の室内楽の普及と演奏機会を支援するために「Samtida musik(現代音楽)」という協会を設立するなど、クラシック音楽の発展と普及に多大な貢献を果たしました。旧チェコスロバキアにも比較的頻繁に足を運んで現地の音楽家たちと交流を結び、自作の楽譜を親しい演奏家に直接手渡すといった温かい親交を続けていました。晩年まで精力的に活動を続けたカールステットは、2004年3月14日にその生涯を閉じました。
【本日のご紹介曲:『バラード(Ballata) 作品18』】
本作は、カールステットが1960年に作曲したソロ・violoncello(チェロ)のための作品です。タイトルの「バラード(物語歌)」が示す通り、まるで1本の楽器が雄弁に、そしてどこか哀愁を帯びた物語を語りかけてくるような劇的な展開を持っています。
【聴きどころ】
1)北欧の哀愁とスラヴ的重厚さの融合
彼が愛したダラルナ地方の民俗音楽の素朴な叙情性と、ショスタコーヴィチを思わせる劇的で力強い音響がチェロ1本で見事に表現されており、独特の緊迫感と美しさを生み出しています。
2)無伴奏チェロならではの豊かな歌心
ピアノなどの伴奏が一切ない「独奏」だからこそ、チェロという楽器が持つ人間の声に最も近いとされる温かく深い音色が引き立ちます。息の長いメロディが紡がれていく様子は圧巻です。
3) 作曲家から演奏家へ手渡された絆の響き
本日の演奏者、ミカエル・エリクソン氏は、かつて旧チェコスロバキアを訪れた際、カールステット本人から直筆の温かい献辞が添えられた刷りたての本曲の楽譜を直接手渡されたそうです。音楽家同士の美しい友情が宿る作品でもあります。
楽譜を通じて作曲者と演奏者が直接心を通わせた背景を知って聴くと、一音一音に込められたニュアンスや親密な空気感がより一層深く心に響きます。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
カールステット、ヤン:バラード(Ballata)
カールステット、ヤン:バラード(Ballata)(amazon music)
|
|
