一日一曲(1838)シュテーレ、ヒューゴ:Marcia

 本日は、生誕200年(1826年6月21日生)を迎えらえたドイツの作曲家、ヒューゴ・シュテーレさんの曲をご紹介します。

【ヒューゴ・シュテーレ:天性の才能に恵まれながらも、あまりにも短い生涯を駆け抜けた知られざるドイツ後期ロマン派の至宝】
 ヨハン・ヒューゴ・クリストフ・ルートヴィヒ・ヘルクレス・シュテーレ(Johann Hugo Christoph Ludwig Herkules Staehle)は、1826年6月21日にフルダの軍人の家庭に生まれました。1829年に家族とともにカッセルへ移住し、そこでピアノとヴァイオリンのレッスンを受け始めます。ヴィルヘルム・ダイヒェルトやモーリッツ・ハウプマンから音楽を学びましたが、1842年にはその「並外れた才能」を認められ、巨匠ルイ・シュポアの直弟子となる栄誉を授かりました。シュポアは父親のような深い愛情をもって彼を導き、シュテーレが作曲した『演奏会用序曲(1842年)』や『交響曲 ハ短調(1844年)』の上演を自ら指揮してその才能を世に送り出しました。
 その後、シュテーレは自身の交響曲をライプツィヒのゲヴァントハウスで初演してもらうべく同地へ赴きますが、期待していたかつての師ハウプマンからの協力は得られませんでした。しかし、彼はこの滞在を無駄にせず、名ヴァイオリニストのフェルディナント・ダヴィドやピアニストのルイ・プレイディから教えを受け、音楽家としての研鑽を積みました。さらにドレスデンへ旅した際には、リヒャルト・ワーグナーが指揮するハインリヒ・マルシュナーのオペラ『ナッサウのアドルフ』を鑑賞して深い感銘を受け、その興奮をカッセルの両親へ手紙で書き送っています。また、フェルディナント・ヒラーの夜会では、ロベルト&クララ・シューマン夫妻との個人的な知遇を得るという貴重な経験も果たしました。
 1847年5月24日には、師シュポアの指揮のもと、カッセル宮廷劇場において彼の記念碑的な大作である歴史オペラ『アリア』が初演され、大成功を収めます。続いて『ピアノ四重奏曲 イ長調 作品1』などの優れた室内楽や歌曲を生み出し、まさにこれからという時でした。しかし運命は過酷でした。1848年3月29日、22歳の誕生日を目前にして、シュテーレは髄膜炎のため急逝しました。家族の尽力によって出版されることになる自身の美しい歌曲集の誕生を、彼自身は見届けることができませんでした。

【本日のご紹介曲:「Marcia(急進マーチ)ハ長調」】
 激動の19世紀ロマン派の時代、激しい革命の嵐へと向かう一瞬の静けさの中で生まれた、瑞々しいピアノ独奏曲です。彼が活躍した時代は、人々が家庭的な平穏やサロンでの芸術交流に深い喜びを見出していた時代でもありました。シュテーレ自身も優れたピアニストとして高い実力を持っており、この作品には彼の鮮やかなタッチと、若き日のあふれんばかりの情熱が凝縮されています。躍動感のあるリズミカルな足取りと、どこか気品を漂わせるロマンティックな美しさが同居しており、聴き手の心を穏やかに弾ませてくれる魅力的な小品です。

【聴きどころ】
1)若々しく明快な、躍動する「急進マーチ」のリズム
 曲の土台を支えるのは、小気味よく、そして前進するような明るい行進曲(マーチ)のリズムです。重々しさは一切なく、若きシュテーレの輝かしい未来を象徴するような、爽やかで生き生きとしたテンポ感が心地よく響きます。
2)時代背景「三月前期(フォアマールツ)」を象徴する、前進するエネルギー
 この曲の別名である「Geschwindmarsch(急進マーチ)」が示す通り、ただの儀礼的な行進曲ではなく、どこか先を急ぐような、前進するエネルギーに満ちています。激しい社会変革を目前に控えた当時のドイツの息吹や、若き作曲家の熱い大志が、音楽の推進力となってダイレクトに伝わってきます。
3)優れたピアニストでもあったシュテーレの、瑞々しい鍵盤の色彩感
 優れたピアニストとして当時の聴衆を魅了したシュテーレだからこそ書けた、ピアノの魅力を最大限に引き出す美しい色彩感に溢れています。シンプルでありながらも、繊細なニュアンスの切り替えや、サロンに響き渡るような温かみのあるピアノの響きを存分に堪能することができます。

NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
シュテーレ、ヒューゴ:Marcia

シュテーレ、ヒューゴ:Marcia(CD)

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