一日一曲(1915)オールダム、アーサー:忘れるな、おお人々よ

 本日は、生誕100年(1926年9月6日生)を迎えらえたイギリスの作曲家兼合唱指揮者、アーサー・オールダムさんの曲をご紹介します。

【アーサー・オールダム:合唱指揮者として20世紀のクラシック界に不滅の功績を刻んだ偉才】
 アーサー・オールダム(Arthur Oldham)は、1926年9月6日にロンドンで生まれました。12歳で父を亡くし、その直後に母も自殺するという非常に凄惨な環境で青春期を過ごしました。しかし音楽的才能に恵まれた彼は奨学金を得て王立音楽大学へ進学しました。在学中にベンジャミン・ブリテンと出会い、彼に才能を認められて弟子として個人的な指導を受けることとなりました。
 1945年、わずか19歳でランバート・バレエ団の音楽監督に就任し、作曲家として順風満帆なキャリアを踏み出しました。ボヘミアン的な生活を送っていましたが、過労や壮絶な生い立ちによる精神的負荷から1954年に神経衰弱を患ってしまいます。この危機を機にカトリックへ改宗し、スコットランドのエディンバラへ移住しました。当地の大聖堂や学校で合唱教育に取り組み、1965年にはエディンバラ国際フェスティバルのためにエディンバラ音楽祭合唱団を設立しました。これが彼の転機となり、卓越した育成手腕を発揮して世界最高峰の合唱団へと育て上げました。
 その後もダニエル・バレンボイムの依頼でパリ管弦楽団合唱団(1975年)を創設したほか、ロンドン交響楽団合唱団やアムステルダム・コンセルトヘボウ合唱団の指導者・設立者を歴任しました。録音でも高い評価を受け、グラミー賞を3度受賞しています。
 合唱指揮者としての多忙な活動の合間にも宗教曲を中心に作曲を続け、2003年5月4日に滞在先のフランス・ヴィジュイフ(パリ近郊)にて76歳で亡くなられました。

【本日のご紹介曲:忘れるな、おお人々よ(Remember O thou man)】
 本曲は、オールダムがエディンバラ滞在期(1960年代)に作曲した合唱曲です。テキストは17世紀のイギリスの音楽家トーマス・レイヴンスクロフトの曲集(1611年出版の『Melismata』)に収められた伝統的なクリスマス・キャロルの詩に基づいています。師であるブリテンの影響を感じさせつつも、古風な詩と現代的な和声感が美しく融合した作品となっています。

【聴きどころ】
1)伝統と現代が交錯するモーダルな旋律線
 レイヴンスクロフトの原曲が持つ古風で少し哀愁を帯びたメロディの趣を活かしつつ、オールダム独特の洗練されたハーモニーで彩られています。古代の聖歌のような厳かさと現代合唱ならではの美しい響きが同居している点が魅力です。

2)人間の罪と救済を描くドラマティックな展開
 「汝人間よ、汝の罪を思い起こせ」という省察から始まり、キリストの誕生による救いへと向かう詩のストーリーに沿って、声部が重なり合いながら情熱的な盛り上がりを見せます。静寂とクライマックスの対比が見事です。

3)名合唱指揮者ならではの緻密な声楽ライティング
 長年みずから合唱団を指揮し続けたオールダムだけに、各パートの声の重なりや響きのバランスが計算し尽くされています。ソプラノの透き通るような高音と下声部の重厚なポリフォニーが生み出す、美しい余韻を楽しめます。

NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
オールダム、アーサー:忘れるな、おお人々よ

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